【お知らせ】シュプリンガーネイチャーが現代原子核物理学における最大級の総集編を出版

Springer

Handbook of Nuclear Physicsは、この分野で世界的に著名な研究者によって編集された4,000ページを超えるハンドブックです。本書は、ビッグバンの起源、ニホニウムの発見、進化する星など、原子核物理学ならびに宇宙核物理学における新たな展開、および確立された発展について包括的にまとめています。

2023年9月21日

宇宙や星の進化や元素の合成で中心的な働きをしてきた原子核とは?その構造や反応を理解する原子核物理学への入門として、また、さらに奥深い研究の世界へ導くのが、このHandbook of Nuclear Physicsです。

Handbook of Nuclear Physicsは、現代原子核物理学の包括的かつ体系的な情報の源であり、実験的および理論的発見を要約し、1980年代後半に放射性イオンビームの開発によって解明された不安定原子核とそのユニークな構造への理解を深めることを目的としています。

およそ4,200ページにわたる今回のメジャー・レファレンス・ワークは、5巻に分かれており、物理学の分野では最大規模のハンドブックとなります。オンライン(電子書籍)でも印刷版でもアクセス可能なこのハンドブックは、大きく3部に分かれています。第1部では、実験と計測によって得られた事実を紹介し、第2部では、実験の事実を説明する確立された理論を要約し、第3部では、現代原子核物理学の主流の一つである宇宙核物理学に焦点を当てています。入門的なレビューに支えられた本書は、すべてのチャプターが大学院レベルの読者にも理解しやすく、また、初学者が現代原子核物理学の基礎を学ぶのに役立つ貴重な資料になります。

このたびの出版にあたり、本書の編集長である、谷畑 勇夫氏、土岐 博氏、ならびに梶野 敏貴氏は次のようにコメントしています。

「原子核物理学は約100年前に始まり、おもに地上に存在する安定核の研究が進みました。ところが、1980年中頃に発明された不安定核ビームにより、寿命が1000分の1秒にも満たない原子核の構造研究が急速に進み、未知であった構造や性質が次々と発見され、原子核物理学は大きく広がりました。存在極限に近い弱束縛状態の特異な性質、陽子•中性子比が大きく異なった原子核が織りなすバラエティに富んだ構造、そして宇宙や星の進化の中心的役割を担ってきた原子核の働き。このハンドブックでは、それら新しい物理について入門者から研究者に向けた、広く深い原子核物理学の紹介をしています。本書は、世界のトップ研究者による113チャプターで成り立っています。読者には原子核物理学の最近の成長と、さらに続く発展の期待を読み取っていただくことを期待しています」

本プロジェクトは2019年に正式に発足し、2020年にリビング・レファレンスとして最初の章がオンラインで出版され、発足から4年以内に印刷版の出版にいたりました。本書の執筆には24カ国から合計224人の研究者が参画しています。

シュプリンガーネイチャーのEditorial Director, Physics and Astronomy booksであるChristoph Baumann(クリストフ・バウマン)は、次のようにコメントしています。

「このたび、原子核物理学におけるこの画期的なプロジェクトに谷畑氏、土岐氏、および梶野氏が貢献くださったことを大変喜ばしく思っています。3人の編者は、原子核物理学のあらゆる分野から最も重要な研究者を集め、おそらく初めて、近年における今回のテーマに関する最も包括的なレファレンス・ワークを執筆することに成功しました。彼らは、確立された知識を要約しただけでなく、ここ数十年のすべての新しい発展も今回のハンドブックに盛り込みました。これにより、原子核物理学の基本的な知識をすべて一冊にまとめ、すべての科学者と学生にとって究極のハンドブックが完成しました」

「シュプリンガーのチームだけでなく、谷畑氏、土岐氏、および梶野氏とともにこの壮大な書籍の制作に貢献してくださった多くの著者、査読者、セクション編集者にも感謝いたします」

編集者について

谷畑 勇夫(たにはた いさお)氏

大阪大学核物理研究センター特任教授、中国の北京航空航天大学物理学院教授。おもな研究テーマは核物理学で、放射性イオンビーム科学の発展に携わる。2011年の東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故後、同発電所から150km圏内の土壌の放射能を測定する国家プロジェクトを発足。

土岐 博(とき ひろし)氏

大阪大学核物理研究センター名誉教授、大阪大学大学院基礎工学研究科客員教授、大阪大学キャンパスライフ健康支援センター特任教授。専門分野は理論核物理理論。そのほか、電気回路のノイズ理論、生物システムにおける突然変異と進化、健康科学における機械学習技術の応用など、研究分野を広げている。

梶野 敏貴(かじの としたか)氏

北京航空航天大学教授。専門分野は、ビッグバンにおける核合成理論、恒星、超新星、中性子星合体、天体物理学的に関連する原子核構造と反応、ニュートリノ振動、銀河の化学進化、素粒子宇宙論、宇宙生物学など。

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Isao Tanihata, Hiroshi Toki, Toshitaka Kajino (Eds.)
Handbook of Nuclear Physics
2023, 4207 p. 401 b/w illustrations, 1098 illustrations in colour
ISBN 978-981-19-6344-5
電子書籍(eBook)としても出版


リビング・レファレンス(Living Reference)について

リビング・レファレンスとは、開発中または更新中のレファレンス・ブックの文献を、リアルタイムに更新され、(冊子より)先んじてオンライン版で正式に出版となったものです。リビング・レファレンスは、組版が行われ、印刷されたレファレンス・ブックよりもかなり前に公開され、継続的に最新のコンテンツを提供します。そのため、次の版が出版されるまで読者は待つ必要がありません。

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メジャー・レファレンス・ワークとは、科学、技術、医学、人文科学、社会科学、ビジネス、経済学など、さまざまな分野にまたがるレファレンス・ブック(辞書・事典類)のポートフォリオです。MRWは、特定の分野、トピックやコンセプトについて権威ある専門家の検証を経た要約を提供し、学生、研究者、専門家にとって、基礎となる出発点として重要な役割を果たしています。(参考:レファレンス・ブックス:今日の研究との関連性と今後の展望

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