過去数十年間の間、世界の多くの場所で急速な都市化が起こり、その結果として、現在大多数の人が都市に居住することとなっています。都市は世界中で、経済活動とイノベーションの中心地となりました。しかしながら、同時に都市の人々はますます遠い場所の資源を多く消費するようになっています。都市化の変遷は、世界各地で異なる軌跡を描いてきましたが、ほとんどの場合、ライフスタイル、そして生産と消費のパターンが本質的に変化するという特徴があります。さらに、都市の活動は、環境汚染物質や温室効果ガスの主要な発生源であり、気候変動や生態系劣化を引き起こしています。この意味において、都市化は、きわめて多様な形で、自然と生態系に多大な影響を与えてきました。
同時に、より頻繁かつ激しい気候災害の増加、あるいは水などの資源不足の深刻化により、多くの都市とその住民は、気候変動の影響に対してますます脆弱になっています。多くの都市、とりわけグローバルサウスでは、地方や国の政府が気候変動に強いインフラを整備するよりも速いペースで都市化が進んでいます。
ここで認識すべきことは、消費やゴミの発生からインフラや資源へのアクセスに至るまでの多くの都市プロセスにおいて、都市域内、都市と都市の間、都市と地方の間の不平等が鮮明になっているということです。例えば、グローバルサウスの多くの都市は、高い非公式性、貧困、資源へのアクセス不平等という特徴があり、そのため気候変動の影響やほかの社会経済リスクに対して非常に脆弱になるのです。
都市の持続可能性を高めつつ、加速した都市化による影響を減らすためには、自然を基盤とした解決策を通して気候変動に強いインフラを開発したり、自然への影響が少ない、より持続可能なライフスタイルへ移行するよう促したり、自然が提供するたくさんの有形無形の利益を利用した都市の快適さを高めるなど、そのための様々な革新的な解決策や介入がほぼ間違いなく必要となるでしょう。もし私たちが自然を損なわない持続可能な都市化の軌道を確実に達成したいならば、そのような介入は、都市域内や都市間(及び都市と地方間)ですでに蔓延している不平等を減らすことを目指すべきです。このことは、貧弱な統治、限られた社会的セーフティネット、正式なインフラの不足によりすでに大多数の都市住民が持続的に住むことが難しくなっているような、急速に発展するグローバルサウスの都市においてはとりわけ重要です。
SDGs シンポジウム2023は、どのように都市と都市活動が自然に影響を与えるか、またどのように自然が都市の課題を解決する助けとなるのかという両方の観点において、都市と自然の交差する領域を探求します。SDG11(住み続けられるまちづくりを)、SDG13(気候変動に具体的な対策を)、SDG15(陸の豊かさも守ろう)、SDG3(すべての人に健康と福祉を)のインターフェース(境界領域)における研究がシンポジウムでの焦点となります。
これらの超学際的なつながりに光をあて、進歩と影響をもたらすために、東京大学とシュプリンガーネイチャーは、2023年2月28日にシンポジウムを共催します。(言語:英語)
このイベントは、UTokyo Compassが掲げる行動計画に沿ったもので、インパクトがあり革新的な都市関連の研究を行おうとしている若手研究者にとってアイデアや視点を提供する場となります。
この機会に、都市、自然、他のSDGsとの境界領域で働く、国内外からの有名な研究者、学生、若手研究者を招待し、どのように研究がこれらの多面的な現象を説明し、高い社会的な関連性とインパクトをもって解決策を生み出すことができるのか、積極的なディスカッションを行います。
詳細は "Call for Poster"をご覧ください。
1993年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・博士(工学)、同生産技術研究所や理化学研究所での勤務を経て、2007年東京大学生産技術研究所教授、2015年同所長。2018年東京大学大学執行役・副学長、2019年同理事・副学長(財務、社会連携・産学官協創担当)を務め、2021年より同総長に就任、現在に至る。その他、2005年から2007年まで文部科学省参与、2007年から2014年まで日仏国際共同研究ラボ(LIMMS)の共同ディレクター、2017年から2019年までCBMS(Chemical and Biological Microsystems Society)会長、2021年より総合科学技術・イノベーション会議議員(非常勤。専門分野は応用マイクロ流体システム、海中工学。)
シューメイ・ バイはオーストラリア国立大学(ANU)の特別教授で、東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)の客員教授である。2011年にANU Fenner School of Environment and Societyに都市環境・人間生態学の教授として着任した。それより以前は、CSIROの上級主席研究員、イエール大学の客員教授、日本の環境学分野の研究機関の上級研究員を務めた。専門は都市サステナビリティに関する科学と政策であり、都市化への原動力とその帰結、都市社会生態システムの構造、機能、過程そして進化、都市メタボリズム、都市サステナビリティ実験と遷移などの先端研究に取り組んでいる。Earth Commissionのメンバーであり、そこで、地球システム境界を都市やビジネスへスケールを超えて変換する研究を扱うワーキンググループ5をリードしている。また、フューチャー・アース(Future Earth)科学委員会の設立メンバーであり、そのUrban Knowledge-Action Networkの共同議長であった。2017年からオーストラリアのAcademy of the Social Sciencesのフェローである。2019年と2022年に、気候変動政策において世界で最も影響力のある100人の一人に選ばれた。2018年にVolvo Environment Prize、2021年にはGlobal Economy Prizeを受賞した。
航空工学の学士および宇宙物理学の修士号を取得。高気圧物理学の分野において博士号を取得後、博士研究者(ポスドク)を経験。Nature の物理科学編集者、Physics Worldの創設編集者としてキャリアを積む。1995 – 2018年に NatureおよびNature Publishing Groupの編集長を経て、2018年からシュプリンガーネイチャーの編集長に就任。科学および科学の社会に対する影響について、英国政府、EU、米国国立衛生研究所と協力。2015年にナイトの爵位を授与。
トーマス・エルムクビストはストックホルム大学 ストックホルム・レジリエンス・センターの自然資源管理論 の教授である。彼の研究の中心は、都市化、都市生態系サービス、土地利用の変化、自然攪乱、社会制度の役割を含むレジリエンス(復元力)の要素についてである。国連主導のグローバルプロジェクト「都市と生物多様性白書」やフューチャー・アースプロジェクト「アーバンプラネット」などいくつかの主要な国際的、学際的な研究プロジェクトを率い、調整役を果たした。現在、ネイチャーリサーチジャーナル「npj Urban Sustainability」の編集長をしている。「Excellence in science and impact」によりBiodiversa prize 2018を、また「Sustainability Science」における最優秀論文によりthe Ecological Society of America 2019 prizeを受賞した。
東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授。2015に北海道大学大学院農学研究院で博士(農学)を取得。学位取得後、日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科助教を経て、2019年11月より現職。生態学を中心に様々な分野の手法を用いて、人と自然の相互作用に関する学際的な研究に従事。主な著作に、『都市生態系の歴史と未来』(朝倉書店、2020年)がある。井上研究奨励賞(2016年)、日本生態学会奨励賞(2018年)、日本森林学会奨励賞(2019年)等を受賞しており、2021年には文部科学省科学技術・学術政策研究所が選ぶ「ナイスステップな研究者2021」の一人に選ばれている。
兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科講師 兼 淡路景観園芸学校景観園芸専門員。東京大学農学部環境資源科学課程緑地生物学専修卒業、同大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻修士課程・博士課程修了。博士(環境学)。筑波大学生命環境系助教を経て、2021年より現職。東北大学大学院国際文化研究科特任講師も兼任。ウィーン工科大学(オーストリア)留学、リンカーン大学(ニュージーランド)で研究滞在の経験を有する。緑地計画学を専門とし、特に都市型農園について、社会的包摂、震災復興、気候変動といった社会や環境に関するさまざまな観点からその役割などを研究している。
イタリアのフェデリコ2世・ナポリ大学で環境・開発経済学の博士号を取得。メキシコのモンテレイ工科大学で客員教授を務めた後、WWF-UKで研究と政策のギャップを埋めるという課題について取り組む。2011年、Springer Natureに入社、Natureファミリー初の社会科学分野における編集者としてNature Climate Changeのシニアエディターに着任。2015年にNatureの編集部に移り、Senior Strategy Editorとしてサステナビリティに関する編集・出版戦略を策定した後、2016年のNature Sustainability創刊時よりチーフエディターを務めている。
アントワーン・ブーケはシュプリンガーネイチャーのヴァイス・プレジデントとして、東京を拠点に日本、東南アジア、オセアニアのインスティテューショナル・セールスを担当している。アジア太平洋地域の学術出版界で20年以上の経験を持ち、シュプリンガー・ネイチャー(日本)の代表取締役社長も務める。これまでアジア地域の出版プログラムを指揮したほか、日本で医学情報事業を立ち上げた。また書籍のコミッショニング・エディターとしての経験もある。オーストラリアで生まれ、ブリスベンのグリフィス大学卒業。東京大学で博士号(物理学)を取得。1994年から日本在住。
亀山康子は東京大学大学院新領域創成科学研究科付属サステイナブル社会デザインセンターの教授である。東京大学着任前は、1992年から環境庁国立環境研究所(現国 立研究開発法人国立環境研究所)(NIES)で様々な役割を果たし、最近ではNIESの社会システム領域 領域長を務めた。専門は気候変動や持続可能性に関する国際協力、また持続可能な開発目標(SDGs)に関連したものである。その他にも、環境経済・政 策学会の副会長・常務理事、公益社団法人環境科学会理事、日本学術会議の連携会員で ある。