シュプリンガー・ネイチャーのジャーナルとブック・アーカイブ

Mary Wollstonecraft（メアリ・ウルストンクラフト）は、1792年に『A Vindication of the Rights of Women with Strictures on Political and Moral Subjects』（女性の権利の擁護―政治および道徳問題の批判をこめて）を著しました。同書において、Wollstonecraftは、女性は生まれつき男性より劣っている訳ではなく、教育が受けられなかったがために、そう見えているに過ぎず、男性と同じ基本的人権が与えられるべきだと主張しています。また、女性は社会のお飾りに過ぎないという考えにも異議を唱え、「幼き時から美しさこそ女性の栄誉と教え込まれることにより、心は身体に押し込まれ、金メッキされた檻の周りをさまよいながら、その監獄を飾り立てることしか求めようとしない」と記しています。彼女の死後200年以上が経ちましたが、同書は、フェミニスト思想の古典として、今なお読み継がれています。

Johanna ‘Hannah’ Arendt（ハンナ・アーレント）は、ドイツ系アメリカ人の政治理論学者です。哲学者と呼ばれることも多かった彼女ですが、個人に対象を絞る同分野のあり方を拒否し、権力、民主主義、権威、全体主義といった問題に注力しました。ホロコーストの最中にドイツから脱出したユダヤ人として、全ての人間の平等を熱烈に支持していた彼女は、最も影響力が大きい著作のひとつ『The Human Condition』（人間の条件）において、個人が世界の中で共存する道を見出す方法を示しています。

分子生物学者のBonnie Bassler（ボニー・バスラー）は、プリンストン大学教授で、世界で最も力強く科学を表現する研究者のひとりです。Basslerは細胞間シグナル伝達に関する画期的研究により、細菌が化学信号を用いた相互コミュニケーションを行うことによって、多細胞生物のように振る舞えることを明らかにしました。彼女の一連の発見は、微生物学の研究に革命をもたらし、スーパー耐性菌に対するより効果の高い新治療法の創出へとつながりつつあります。

Marie Curie（マリー・キュリー）は、科学界が依然として男性優位であった時代に、放射能研究の先駆者として、また、女性科学者の草分けとして燦然と輝きを放った存在です。ポーランドに生まれ、フランスで活躍した化学・物理学者のMarie Curieは、ふたつの新元素、ポロニウムとラジウムを発見するとともに、放射能、すなわち、不安定原子が放射線という形でエネルギーを放出して崩壊するプロセスについて、私たちの理解に革命をもたらしました。ノーベル物理学賞を受賞した初めての女性であっただけでなく、後にノーベル化学賞も受賞、ノーベル賞を2度受賞した最初の人物にもなりました。同世代の中で最も著名な科学者のひとりであり、その影響は、素粒子物理学から医学に至る、現代科学の幅広い分野に及んでいます。

Rosalind Franklin（ロザリンド・フランクリン）は、英国の化学者・X線結晶学者です。DNAによるX線散乱に関する彼女の研究は、DNAの二重らせん構造の発見へとつながりました。Franklinが撮影した「Photo 51」と呼ばれる有名な写真は、その構造を捉えており、20年に及ぶ研究をつなぎ合わせる最後の鍵となりました。その直後、Franklinの共同研究者で、彼女と折り合いの悪かったMaurice Wilkinsは、彼女の許可も承諾も得ずにFranklinの研究成果を用いて、WatsonおよびCrickとともにDNAの構造に関する論文を1953年、Natureに出版しました。Wilkinsは、DNA構造の発見におけるFranklinの役割を否定していますが、Crickは、Franklin自らが発見する「あと二歩のところまで到達していた」と認めています。

英国の著名な生化学者、Dorothy Hodgkin（ドロシー・ホジキン）は、他に先駆けて、X線結晶学の手法を生体分子の3次元構造の決定に応用し、生体分子の身体内での働きに原子配列が及ぼす影響の解明に貢献しました。インスリンとビタミンB12の構造を解明した研究が良く知られていますが、1964年、彼女はノーベル化学賞を受賞した三人目の女性となりました。

Augusta Ada Byron King、the Countess of Lovelace（ラブレース伯爵夫人オーガスタ・エイダ・キング。Ada Lovelaceとして知られる）は、世界初のコンピュータプログラマーです。詩人のバイロン卿とその妻Anne Milbankeの娘として、1815年にロンドンで生まれました。数学と分析論の才能を早くから開花させたAdaは、若くしてCharles Babbageと共同で解析機関（Analytical Engine）の研究を進めました。解析機関に関する深い理解に基づき、Adaは、世界最初のコンピュータプログラムを書き上げたばかりか、正しいアルゴリズムさえ与えることができれば、やがて、計算機で画像や音楽をも創り得るという未来も予見しました。