ご存じですか?-Natureに関する10の薀蓄
Natureは、2019年11月に創刊150周年を迎えました。それを記念して、Natureの歴史に詳しい社内アーキヴィストのAlysoun Sanders(アリソン・サンダース)が過去のアーカイブを調査して発見した興味深い事実をご紹介します。世界で最も長い歴史を持つ学術誌のひとつであるNatureの知られざるエピソードをお楽しみください。
1) Natureの出版、創刊当時は赤字でした。
科学史家Roy Macleod(ロイ・マクラウド)の試算によると、広告が4ページにわたって掲載されていましたが、その広告収入をもってしても年間の出版費用の半分にしかならず、また初年度の購読者は200人にも満たなかったのではないかと見られています。
2) 歴代のNature編集長は、わずか8人。そのうち4人はナイトの称号を受けています。
- Sir Norman Lockyer (ノーマン・ロッキャー卿)1869~1919年 (1897年にナイト称号)
- Sir Richard Gregory (リチャード・グレゴリー卿)1919~1938年 (1919年にナイト称号)
- A J V Gale(A・J・V・ゲイル)、 L J F Brimble(L・J・F・ブリンブル)共同編集長 1938~1961年
- L J F Brimble(L・J・F・ブリンブル)1961~1965年
- Sir John Maddox (ジョン・マドックス卿)1966~1973年、1980~1995年(1994年にナイト称号)
- David Davies (デイビッド・デイビス)1973~1980年
- Sir Philip Campbell (フィリップ・キャンベル卿)1995~2018年 (2015年にナイト称号)
- Magdalena Skipper (マグダレーナ・スキッパー)2018年~現在
3) 1873年、Natureで報じられた一匹のスズメバチの死。なぜスズメバチの死が報じられたのでしょうか?
そのスズメバチは、Natureの常連寄稿者だったSir John Lubbock(ジョン・ラボック卿)のペットだったのです。ラボック卿はNature創刊号に書評を掲載したのをはじめ、マクミランからも39冊の書籍を出版しています。そのうちの1冊、1874年にNatureシリーズとして出版した『On the Origin & Metamorphoses of Insects(昆虫の起源と変態について)』には、彼のペットだったスズメバチの冒険についての記述もあるかもしれません。
4) Natureで論文が掲載された初めての女性研究者 は天文学者の Elizabeth Brown(1830-1899年)でした。
Elizabeth Brown (エリザベス・ブラウン)は、太陽観測、特に黒点と日食の観測が専門の天文学者で、英国天文学会(British Astronomical Association – BAA)の設立活動にも関わっています。BAAはブラウンらの尽力もあって、1890年の設立当初から女性に門戸を開いた学会でした。彼女のNature初論文は、「The Recent Aurora(先日のオーロラ 」。1882年10月5日に掲載されました。
5) 「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロルによる論文がNatureに。
『不思議の国のアリス』の著者、Lewis Carroll/Charles Dodgson(ルイス・キャロル、本名チャールズ・ドジソン)は、マクミランから数学書を何冊か上梓していますが、Natureからも3本の論文が出版されています。
- 「To Find the Day of the Week for any Given Date(その日が何曜日だったか見つける方法)」 (1887年3月8日)
- 「Brief Method of Dividing a Given Number by 9 or 11(任意の数を9または11で割る簡単な方法)」 (1897年9月28日)
- Abridged Long Division(簡略化した長除法) (1897年12月21日)
6) 1961年には、アルゼンチンからユーゴスラヴィアまで計65か国からの2,500通にも及ぶ新しい研究成果を掲載。
この2,500という数は研究論文のみの数で、科学関連ニュース、論説、書評などは含みません。
7) 1965年、記念すべき5,000号を出版
Natureの第5,000号は、1965年8月28日に出版されました。
8) 「ウェブの父」Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ・リー)の母親MaryとNatureの関係は?
「ウェブの父」と呼ばれるティム・バーナーズ・リーの母親Mary Berners-Lee(メアリー・バーナーズ・リー)は、いわば「ウェブの祖母」にあたりますが、Natureに掲載された「デジタルコンピュータの仕事をしたい数学者を求む」という求人広告に応募したと言われています。応募するにあたり2日間かけて「デジタルコンピュータとは何か」を調べ、めでたく採用されたとのことです。
(www.theguardian.com/technology/2018/jan/23/mary-lee-berners-lee-obituary)
9) 2007年、Nature podcastを開始
Natureは2007年にポッドキャストを開始し、2013年には300本目を配信しました。現在、週平均40,000~50,000回ダウンロードされています。
10) H G Wells の小説にも登場するNature
1904年、マクミランから出版されたH G Wells(H・G・ウェルズ)の名作The First Men in the Moon(邦訳『月世界探検』)の中に、Natureに触れた箇所があります。主人公のCavor(ケイヴァー)と、地球の重力を遮断する物質であるCavorite(ケイヴァリット)に関するケイヴァ―の提案について語られる場面です。
「もしケイヴァ―がそれを達成したら、その物質はケイヴァリットとかケイヴァリンとして後世まで伝わり、ケイヴァ―自身は王立学会特別研究員になって、科学界の重鎮としてNatureに顔写真が掲載されたりなんかするんだろう」(原著の24~25ページ)
Nature150年の歴史に関する論説は、 こちらからご覧いただけます。