過去数十年にわたり、人間の活動が地球と社会に多大な影響を与えてきたという認識の高まりは、 持続可能な開発を達成するための前例のない取り組みをもたらすきっかけとなりました。持続可能な開発への道筋は、現在と将来の世代のニーズと価値観を反映しつつ、環境面の制約の範囲内に位置し、経済的・社会的なウェルビーイングを確保する必要があります。持続可能な未来への移行における平等の実現は、政策的あるいは学術的な議論では一貫して強調されてきたものの、依然として実現の難しい問題でもあります。 現実に、社会の中あるいは複数の社会の間に根強く存在する不平等や格差が、サステナビリティとウェルビーイングに向けた私たちの歩みを横道にそらす大きなリスクを生み出しています。例えば、特定の人々が、環境、経済、社会の変化による負の影響をとりわけ強く受けたり、サステナビリティとウェルビーイングを向上させようとする運動の恩恵から排除されたりすることがあります。同様に、そのような不利な立場に置かれた社会集団は、サステナビリティとウェルビーイングのための基本的な言説や解決策を形成する上で、限られた意見や力しか持たず、公平性ついての懸念を招くこともあります。所得、性別、年齢、人種、民族、障害などは、このようなリスクを生み出す不平等のほんの一例に過ぎず、真に持続可能な未来への移行を確実にするためにはこれらに取り組まなければなりません。 多面的な不平等は課題そのものの解決が困難である上に、包摂的な情報収集や知識生成という点においても複雑で、結果、変遷する不平等の本質を明らかにする難しさに直面しています。分野を超えた、学際的な知見の開発は急務であることは間違いありませんが、簡単な解決策はありません。さらに、不平等や格差への対応に必要な知見や行動について、理論と実践の間には距離が存在します。この理論と実践のギャップは問題の理解深化や解決策を描く上で、経験知を含めた総合知の必要性を浮き彫りにしています。 2025年のSDGsシンポジウムでは、サステナビリティとウェルビーイングを達成するために、不平等を理解し、それにどのように取り組むべきかを批判的に検討します。同シンポジウムの焦点は、SDG5(ジェンダー平等)、SDG10(不平等の削減)とSDG17(パートナーシップで目標を達成しよう)と他のすべてのSDGsとの接点における研究と実践です。2025年SDGsシンポジウムの中心的な議題は、最先端の研究を通じて生み出された知見をいかにしてインクルーシブな実践に活用し、政策や社会で実践することができるか、また、サステナビリティのための科学を支援しさらに促進するために、組織がいかにして包摂性のための研究実践を採用することができるかについて議論することです。 東京大学とシュプリンガーネイチャーは、このような学問の枠を超えた連携を強調するため、2025年2月8日に2025年SDGsシンポジウムを共催します。このイベントは、UTokyo Compassのビジョンと、多様性、平等性、ならびに社会的にインパクトがあり変革的な研究を目指す若手研究者の支援に関するシュプリンガーネイチャーのイニシアティブの双方に密接に関連しています。 本シンポジウムにおいて、不平等とSDGsの接点で活躍されている国内外の著名な研究者や学生・若手研究者を招き、それぞれの研究がどのようにこれらの多面的な現象を説明し、社会的関連性とインパクトに富んだ解決策を生み出すことができるのか、積極的な議論を行います。 |