薬剤を市場へ ― 審査経路、特許、独占権
AdisInsight Patentsは、直感的に操作できる検索機能を備え、特許データを薬剤に直接関連付けしているため、特許のエキスパートではない方々でも薬剤の保護状況やFreedom to Operate (FTO)の概要をすばやく理解することができます。このFAQと用語集は以下を解説します。
- 特許権と独占権に関して一般的に使用されている専門用語
- 薬剤の保護状況に関する複数の異なる特許や独占権がもたらす結果や影響
AdisInsight Patentsは、直感的に操作できる検索機能を備え、特許データを薬剤に直接関連付けしているため、特許のエキスパートではない方々でも薬剤の保護状況やFreedom to Operate (FTO)の概要をすばやく理解することができます。このFAQと用語集は以下を解説します。
AdisInsightの高度な索引付けと直感的に操作できる検索機能により、ユーザーはオレンジブックの検索機能に比べ、たやすく薬剤の置かれている環境という観点で情報を検出することができます。オレンジブックに掲載されている薬剤についての国際特許情報を加え、グローバル特許の全体像へと拡張して収載しています。特許期限や特許出願などの追加のデータの数々が、オレンジブックで入手できるデータをさらに補います。
正式名は、「治療学的同等性評価のある承認医薬品(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations)」であり、米国で承認され米国食品医薬品局(FDA)により一般の使用が安全かつ有効であるとみなされた低分子の薬剤(処方薬&OTC)に関する情報を掲載しています。
米国での特許権の存続期間は、原則として出願日から起算した20年をもって満了となります。
米国の仮出願制度とは、通常の特許出願の要件を満たさない簡易な様式・書類によって出願を行う制度です。出願者は仮出願の出願日から12ヶ月以内に、仮出願に基づく本出願もしくは仮出願を本出願に出願変更し、米国における出願日を確保することができます。
AdisInsight Patent profileに記載されるLoss of Exclusivityは、オレンジブックに掲載されるExclusivityに由来します。
このExclusivityは、ジェネリック医薬品の促進と新薬の開発との良いバランスと保つことを目的としており、競合品の市場への参入を抑制する「市場での排他権」を意味します。ExclusivityはPatents(特許権)とは別の制度で、医薬品の承認の種類や日付によってその保護期間や満了日が決まります。
米国において、NDA(New Drug Application:新薬承認申請)は新薬に関係し、ANDA(Abbreviated NDA:簡略化新薬承認申請)はジェネリック医薬品に関係します。それぞれ本質的には米国食品医薬局(FDA)に自社の薬剤を米国で販売しマーケティング活動をすることの承認を得るための申請です。
FDAの必要要件から分かるように、NDAは本質的には新薬承認をサポートするためのエビデンス一式です。レギュラトリー上の承認経路をどのようにとるかによって(下記を参照)エビデンスは異なるソースから入手されます。
NDAには、FDAが以下を判定するための必須データが含まれている必要があります:
NDAには、二種類のレギュラトリー上の経路があります。
引用元:
Fig2:https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm
簡略化新薬承認申請(ANDA)は505(j)の経路に従います;
ANDAは、ジェネリック医薬品の製造販売のために提出する承認申請です。ANDAでは新薬承認申請(New Drug Application)の承認プロセスが簡略化され、先発医薬品の安全性・有効性を証明する臨床データの参照が可能です。そのかわりに申請者は、後発薬と先発医薬品が生物学的に同等であることを示す必要があります。
https://www.fda.gov/ucm/groups/fdagov-public/@fdagov-drugs-gen/documents/document/ucm579751.pdf
非仮出願から特許取得までの期間は、およそ2年間です。米国特許商標庁(USPTO)に出願した後出願内容が審査され、拒絶査定を経て出願人に最初の拒絶理由通知が送付されるまで、平均15カ月を要します。
米国改正特許法では、非仮出願日もしくは最先の優先日から18カ月経過後に特許出願を公開することを規定しています。まれに、のちに成立した特許の請求項と出願公開された請求項とが著しく一致することもあります。非仮出願から特許取得(発行)まで、平均すると約24カ月(特許の種類による)かかると報告されています。NDA承認後に特許が発行された場合、NDA申請者はオレンジブック掲載のために、当該特許の発効日から30日以内に必要な特許情報をFDAに提出します。
特許とは別に、薬剤は他の制度(Exclusivity)により保護されている場合があり、排他的な製品の市場独占が認められています。ジェネリックメーカーが特に関心を持っているのは、180日間独占販売権です。
180日間独占販売権は、実質的に完全なパラグラフIV証明書を提出し、申請が承認された、最初のANDAの申請者に付与されます。
180日間独占販売権は、パラグラフIV証明が認められたうえでの商業的販売の開始日からスタートします。
https://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM536725.pdf
Exclusivity名とその期間 | 付与の理由 | 開始日 | コメント |
希少疾病用医薬品(7年間) | 米国で患者数200,000人未満の疾患の治療を目的として開発された薬である(開発費用の回収が困難であれば200,000人を超える場合も認められる) | NDAの承認 | FDAは、同一薬剤の同一疾患に対するNDA申請またはANDA申請を7年間承認できない |
新規化学物質(5年間) | FDAがFDC法第505条(b)に基づいてこれまでに承認した有効成分を含まない、単体薬剤若しくは配合剤である | NDAの承認 | FDAは、同一化合物については5年間、パラグラフIV証明書を添付した場合は4年間、ANDA申請および505(b)(2)経路の申請は受け付けられない |
QIDP 特定感染症製品(特定の独占権期間に加えて5年間) | 特定感染症製品(QIDP)指定を受けた薬剤である(指定する特定病原体による重篤または致死的感染症を治療するためのヒト用の抗菌または抗真菌の薬剤) | NDAの承認 | 特定感染症製品(QIDP)の申請の際、リクエストによりファストトラック指定も付与される。最初のQIDP申請は優先審査される。QIDPは新薬に限られず、また異なる剤形や複数の適応症に対し、単一薬剤が複数のQIDP指定を受けることも可能。 |
その他(New Clinical Investigation Exclusivity)(3年間) | 既承認薬の変更(新剤形、新投与量、新規用途など)のために新たな臨床試験を実施 | NDAの承認 | FDAは、この独占権の承認をサポートする情報を用いたANDA申請または505(b)(2)経路の申請を、3年間承認できない |
小児用医薬品(6カ月) | FDAからのWritten Request(要求書)に基づいた、当該医薬品の小児臨床試験の実施およびデータ提出 | 試験対象の医薬品に対する、申請者が有する関連特許および/または独占権の満了時 | この 6か月の小児用医薬品独占権は、申請者に既に付与されている他の独占権または特許保護の期間に追加する形で与えられる。 |
参照:
https://www.fda.gov/downloads/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm447307.pdf
ANDA申請者は、FDAによるジェネリック医薬品の審査と承認をサポートするためのデータを提出しますが、これらの「簡略化」された申請では通常、安全性と有効性を証明するためのデータを必要としません。これは、ジェネリック医薬品の安全性、有効性は参照リスト薬(RLD)のNDA承認によって証明されているという認識で、一般に容認されています。しかし、ジェネリック医薬品の申請者は、その製品の生物学的同等性(新薬と同等の特質特性をもつこと)のエビデンスを提供しなければいけません。局内でトラッキングするためにすべてのANDAには、ANDA番号が付与されています。
ANDA証明書
https://www.fda.gov/drugs/informationondrugs/ucm079436.htm
ブランド名はありませんが、承認された上市済みのブランド薬と同じです。ブランド薬を製造販売する製薬会社自身によって、またはブランド薬を製造販売する製薬会社から許諾を受けた会社によって製造販売されることもあります。オーソライズド・ジェネリックは、元のブランド薬とまったく同一の有効成分、非有効成分を含有していますが、色や錠剤への表示などが異なる場合があります。ブランド薬と同じNDAのもとに上市されます(つまり、ANDA申請は要求されない)が、オレンジブックには掲載されません。NDA保有者は、そのNDAが関連する全てのオーソライズド・ジェネリックをFDAへの年次報告書へ記載する義務があります。FDAは報告されたオーソライズド・ジェネリックのリストを公開し、これを四半期毎に更新します。ブランド薬の企業は、もとのブランド薬と認可されたオーソライズド・ジェネリックを並行して販売することがあります。
ブランド・ジェネリックは、ANDAプロセスにより承認された薬剤で、一般名ではなく(製造販売を行う会社独自の)名称がつけられています。これらのジェネリック医薬品は、ブランド薬を製造販売する企業またはジェネリック医薬品企業により開発され、ブランド薬の特許満了後に販売されます。独自のブランド名が付けられたジェネリック医薬品は、他のすべてのジェネリック医薬品同様、元のブランド名製品と同一の有効成分を含み、生物学的同等性を持っていなければなりませんが、オーソライズド・ジェネリックと違い、非有効成分が元の医薬品とは若干異なる場合があります。
この市場独占期間は、実質的に完全なパラグラフIV証明書付きのANDAを提出し申請が承認された、最初のANDAの申請者に付与されます。
https://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM536725.pdf
抗生物質開発インセンティブ法(Generating Antibiotics Incentives Now:GAIN法)に基づき指定感染症医薬品(QIDP)指定された薬剤に対して、特定の他の「独占権」の行使期間の、5年間延長を認める措置です。この独占権延長の対象には、7年間の希少疾病用医薬品独占権(ODE)、適切な場合は3年間の「他の」独占権も含まれます。
https://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM594213.pdf
この5年間の独占権期間は、NDAの承認日から生じます。このexclusivityは、FDAがFDC法第505条(b)に基づいてこれまでに承認した有効成分を含まない、単体薬剤もしくは配合剤に与えられます。これらは特許や他のexclusivityと並行して効力を持ちます。
NDAの承認日より生じる7年間の保護期間です。米国で患者数200,000人未満の疾患を治療するため(開発費用回収が困難であれば200,000人を超える場合も認められる)に開発された医薬品に与えられます。このexclusivityは特許や他のexclusivityと並行して効力をもちます。
https://www.fda.gov/downloads/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm447307.pdf
NDAの承認日から生じる3年間の保護期間です。既承認薬の変更(新剤形、新投与量、新規用途など)のため新たな臨床試験を実施する必要があった薬剤に与えられます。
https://www.fda.gov/downloads/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm447307.pdf
FDAからのWritten Request(要求書)に従い申請者が小児臨床試験を実施した場合に与えられる、関連特許/独占権の保護期間の6か月延長です。このexclusivityは、小児臨床試験で試した医薬品に限らず、同じ活性部分(active moiety)を含み、有効な特許または独占権を有する医薬品について、申請者が保有する全ての剤型や適応症に適用されます。申請者が小児臨床試験データを提出し、承認される時点で9カ月以上の保護期間が残っていることが条件です。延長資格を取得するために、全ての適応症や製剤について小児臨床試験を行う必要はありません。
https://www.fda.gov/downloads/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm447307.pdf
新薬承認申請は、FDAの要件に従い、新しい薬剤の安全性と有効性に関するエビデンスを含む書類を提出することです。薬剤の開発者が米国で販売を行うための承認を得るために作成し、FDAに提出します。局内でトラッキングするためにすべてのNDAには、NDA番号が付与されています。
https://www.fda.gov/drugs/informationondrugs/ucm079436.htm
満了日を既に迎えた特許や以下の特許は、オレンジブックには掲載されません。
https://www.upcounsel.com/orange-book-listed-patents
正式名は、「治療学的同等性評価のある承認医薬品(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations)」であり、米国で承認されFDAにより一般への使用が安全かつ有効であるとみなされた低分子の薬剤(処方薬&OTC)に関する情報を掲載しています。
含まれる情報:
https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/
6桁の番号であり、先頭には、NDAであればNが付き、ANDAであればAが付きます。剤形や投与経路などについての一部変更申請により、一つの薬剤が複数のNDA番号を持つこともあります。
NCE、ODE、PED、GAINを含む22種類あります。
米国特許商標庁(USPTO)より発行される、6-8文字の番号です。特許の種類により接頭文字が付く場合があります。
約2,400種類あり、一般的なものから、薬剤もしくは個々の適応症に特定されたものもあります。
複数の力価が存在する場合に、各薬剤/NDAに付与されます(例:001=20mg、002=40mg)。
https://www.uspto.gov/patents-application-process/applying-online/patent-number
https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/results_patent.cfm
https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/results_exclusivity.cfm
オレンジブックに掲載されるFDA承認済みの薬剤で、ANDA申請に際し、生物学的同等性試験の対照薬となったかを示しています。申請されたジェネリック医薬品は、有効成分、剤形、投与経路、力価、ラベル、使用条件が「同一」である必要があります。
https://www.fda.gov/ucm/groups/fdagov-public/@fdagov-drugs-gen/documents/document/ucm579751.pdf
欧州連合(EU)では、SPC制度により特許存続期間の延長が認められています。基本特許で保護される医薬品について、医薬品の販売承認を得るまで特許発明を実施できなかった場合などに、販売承認の手続に要した期間に応じて(最高で5年)、特許期間満了後さらに特許権の存続期間を延長することができます。
SPCによる保護期間は、基本特許出願日からEU 市場における最初のMarketing Authorisation (MA)取得日までの期間から5年を引いた期間で、手続きは各国ごとに行う必要があります。
http://www.mathys-squire.com/assets/Uploads/documents/Mathys-Squire-SPCs-2015.pdf
米国において、ジェネリック医薬品申請者はANDAまたは505(b)(2)申請の準備ができているが、参照する先発医薬品の有効な特許や独占権によりブロックされている場合、FDAは仮承認の詳細を記載したTentative Approval Letterを発行します。
仮承認(TA)は、自動的にすべてを承認することを意味しません。FDAは、申請者が承認のための必須要件を全て満たしていることを証明するまで最終的な承認をしません。また仮承認では、申請者はジェネリック医薬品を販売することはできません。
https://www.fda.gov/internationalprograms/pepfar/ucm119231.htm
https://www.fda.gov/drugs/informationondrugs/ucm079436.htm
本ページは2018年8月時点での情報に基づき参考情報として掲載しています。内容の変更については責任を負いません。最新情報についてはFDAのHPをご確認くださいますようお願いいたします。