行動科学・心理学イーブック・コレクションについて編集部に聞く

シュプリンガーネイチャーの行動科学・心理学イーブックは、定評あるインプリントであるPalgrave MacmillanとSpringerのタイトルで構成されており、両者の特徴と強みを活かした、教育、学習、研究のための充実した情報源となっています。

行動科学編集部の書籍出版Rachel Daniel, Executive Editor部長であるRachel Danielに、Palgrave Macmillanが扱う定番書籍から、AIや行動といった最新の研究トレンド、そして2020年に起きた大きな変化が新しいコレクションに与える影響まで、幅広いテーマについて話を聞きました。

Palgrave Macmillanが人文社会科学の領域で果たしてきた役割を教えてください。

PalgraveとMacmillanが長年培ってきた出版の伝統と、人文社会科学の最前線を伝えるダイナミックな視点が融合されたインプリントです。高い品質と卓越性を維持しながら、学術コミュニティの最新の知見とニーズにシームレスに対応している希有なインプリントと言えるでしょう。人文社会科学におけるPalgrave Macmillanの評価は、著名な著者や編者が参加していることはもちろん、毎年、多数の権威ある賞を受賞していることからも明らかです。人文社会科学のテーマに対する学際的で批評的なアプローチは、Palgrave Macmillanの重要なアイデンティティであり、シュプリンガー・ネイチャーの出版プログラムにおいて、重要なポジションを占める理由でもあります。

シュプリンガーは2015年にネイチャー・パブリッシング・グループおよびパルグレイブ・マクミランと合併し、「シュプリンガーネイチャー」として新しいスタートを切りました。SpringerとPalgraveの編集部が統合され、イーブックがコレクションに追加されたことは、行動科学・心理学のイーブック・コレクションにどのような影響を与えたのでしょうか?

合併により、シュプリンガー・ネイチャーは心理学研究における世界最大規模の出版社となりました。行動科学・心理学のイーブック・コレクションは、この分野の第一人者から新進気鋭の研究者まで、幅広い著者の書籍を取りそろえています。SpringerとPalgrave Macmillanというこの2つのインプリントは互いに補完しあっています。権威ある文献と科学的根拠に基づく研究の出版社として名高いSpringerに、批評的で人文主義的なアプローチを用いるPalgrave Macmillanが加わったことにより、バランスのとれたイーブック・コレクションが完成しました。新しい体制の下、双方の編集者が力を合わせることにより、著者、研究者、教育者、読者のニーズに引き続き寄り添っていきたいと考えています。

編集面では、学生、教員、研究者、図書館へのサービスを拡充するために、この数年間に他にどのような進展がありましたか?

ブックタイプや著者の多様化がさらに進みました。数年前から、レファレンス・ブックや、ハンドブックやテキストブックなどの学生向け資料の提供も開始し、図書館が研究者や学生コミュニティのニーズに合わせた資料を包括的に提供するリソースとなっています。編集部は国際性や視点の多様性に配慮しながら、新しいプロジェクトに精力的に取り組んでいます。行動科学・心理学とは、ざっくりと言えば心、行動、人間関係の研究です。この変化し続ける領域を支援する研究成果を提供するためには、多様な観点を盛り込むことはもちろん、人種、民族、性的指向、国籍といった多様な背景を反映した書籍を出版する必要があります。

コレクションの中心になっているのは、どのようなコンテンツですか?利用者グループによって重視されるコンテンツは違うのでしょうか?

イーブック・コレクションには研究や教育向けの多様な資料が含まれています。例えば、大学院生やそれ以上の研究者を対象としたテキストブックや各種リソースなどです。読者や研究者を引き付ける新しい方法も常に模索しており、今後はハイパーリンクや動画コンテンツといったインタラクティブな機能を備えたイーブックが増えていく予定です。このコレクションのもう1つの特徴は、プラクティショナーガイドなど、心理学の専門家やこの分野でのキャリアを目指す人々を対象としたタイトルが含まれていることです。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、書籍の執筆活動にも影響を与えていますか?

私たちは出版社ですので、すべての活動は著者を中心に回っています。ロックダウンの期間は、著者の執筆活動に2つの相反する傾向が見られました。これはコロナ危機がもたらした課題や変化への対応が人によって異なることをはっきりと示しています。一部の著者は、家庭での責任が増えたため、あるいは授業のスケジュールが逼迫したために、企画書や原稿の提出を遅らせる必要があったようです。その一方で、通勤が不要になったり、柔軟な働き方ができるようになったりしたことで、空いた時間を活用し、これまで時間をかけて取り組むことができなかった長期的な出版プロジェクトに取り組むことができた著者もいました。

行動科学研究の最近の動向を教えてください。

最近は、テクノロジーや人工知能を人間の行動に応用する方法に関心が集まっています。心理学の領域では、テクノロジーをメンタルヘルスへの介入に利用する方法がかねてから注目を集めていますが、コロナ危機によって、その重要性はますます高まっています。例えば、メンタルヘルスのカウンセリングを遠隔から実施する試みが広がっていますが、これは、この種のサービスの利用に革命的な変化を起こす可能性を秘めているといえるでしょう。もう1つの興味深い動向は、人間の行動を理解し、影響を与えるために、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、機械学習を利用しようという動きです。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、行動科学研究の動向に変化が生じる可能性はありますか?

行動科学の分野では、今後数十年にわたって新型コロナウイルス感染症の余波が研究されることになるでしょう。今回の感染拡大は、人と人との関わり、家庭や社会全体での人々の行動を抜本的に変えました。特に医療従事者を中心に増えている心的外傷後ストレス障害(PTSD)の状況を精査する必要もあります。「ズーム脳」のような新しい現象についても研究が待たれます。コロナに関する研究を進める一方で、人種間の平等や気候変動の脅威に関する社会運動が、精神的プロセスやメンタルヘルスに与える影響を解明することも不可欠となるでしょう。

2021年のコレクションについて、主なトピックを教えてください。

2021年のコレクションの中心となるのは、2020年に世界が経験した混乱と密接に関連したタイトルです。例えば、行動とテクノロジーが交差する分野と関連したトピック、メンタルヘルスと人種差別、社会的公正、ジェンダー平等、LGBTQのアイデンティティなどです。著者の国際化や多様性もさらに高まる予定です。 


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