スマートシティから自動運転車まで: シュプリンガーネイチャーの新しいイーブック・コレクションが展望する未来
ロボットやサイバー物理システム、組み込みシステムなどのインテリジェントシステムは今後数十年で大きな技術的・社会的変化をもたらすと見込まれています。これらのシステムはコンピュータ知能やデータ科学、通信技術を使用して、人間同様に、互いに協力して機能しています。国連が展望したとおり、今後、これらの技術から派生したモノのインターネット(Internet of Things)や、スマートシティ、スマートホーム、インテリジェント輸送、ヒューマノイド、スマート農業、インダストリー4.0、医療ロボットやその他多くの技術が、よりサステナブルな世界持続可能な地球を構成していくでしょう。
2019年よりシュプリンガーネイチャー・イーブックスに加わったIntelligent Technology and Roboticsコレクションは、モノグラフ、プロシーディング、テキストブックといった様々なフォーマットにより、確立された知識と最前線の研究情報を提供します。学際性を本質とした当コレクションには、インテリジェントテクノロジーとロボティクスという、科学と工学における非常にダイナミックな領域の重複点と多様性が反映されています。Springer Handbook(著名なSpringer Handbook of Roboticsを含む)とテキストブックは、現代の知能システム分野についてまとめた堅実なリソースを探している読者にとっては理想的文献であり、モノグラフおよびプロシーディングもまた、この急速に進化する分野の研究室や学会から報告された最新の知見を提示しています。
この新しいコレクションが取り扱う分野は、計算知能、ロボティクス、制御、自動化、知能と自律システム、ビッグデータ/データ科学、自動運転車などです。コレクションの発展に従って、モノのインターネット、サイバー物理システム、環境知能など、新たな研究分野もまた焦点になると予想されます。この学際的なコレクションは、 Bruno Siciliano、 Oussama Khatib、 Peter Corke 、Frank Allgöwer、 Ken Goldbergなど、多くの著名な研究者による多大な貢献を得ています。
以下の記事では、シュプリンガーネイチャーの応用科学担当バイスプレジテントのDieter Merkleと、Intelligent Technology and Robotics コレクション 総括担当エグゼクティブ・エディターであるThomas Ditzingerが、この分野の発展と進歩を促す上での学際的な連携の重要性について語っています。また、インテリジェントテクノロジーとロボティクスの研究をリードする国々についても言及し、新たな工学の派生分野の成長についても考察しています。
シュプリンガー・イーブック・コレクションのEngineeringパッケージとは別に、新規コレクションとして提供することにしたのはなぜですか?
つい最近まで、知能システムと人工知能のコンテンツは純粋な研究目的の世界に限っていましたが、ここへきて応用科学の分野へと進化しました。それは、今回の新たなコレクションの中核をなす複数のテーマの応用です。計算知能とロボティクスの成長に伴い、数学と工学はより統合され、また他の複数の分野と組み合わされることにより、全く新しい分野を創出してきました。この新しい分野は現在、多くの人に「インテリジェントテクノロジー」と呼ばれ、重要性は日に日に高まっており、我々の日常生活や将来を大きく変える可能性を秘めています。
Intelligent Technology and Roboticsコレクションは、強固な工学の基盤上に構築された学際的コレクションです。コレクションのいくつかのタイトル(Springer Handbook of Robotics、Robotics, Vision and Controlなど)は、既に世界で多くの読者を獲得し、数多くダウンロードされ、新たな研究で頻繁に引用されています。
数学と工学の分野から派生した、ニッチで新しく多様なトピックの成長にインスピレーションを受け、シュプリンガーネイチャーはイーブックのパッケージに新たな専門分野を設けることとしました。工学分野の発展と多様化のスピードに伴い、Engineeringコレクションは過去2、3年で急速に成長しており、これが知能システムだけに焦点を当てた新たなコレクションの企画につながったのです。
「国際的な研究および産業を見渡してみると、データ科学やニューラルネットワーク、群知能、システム科学、制御・自動化、ロボティクスといった学際的な応用領域が、より目を引く特徴となっています。新しいイーブック・コレクションは、これらの領域を広くカバーします。Intelligent Technology and Roboticsは、自動化と制御の古典的な工学基盤から生まれ、その範囲を広げています。これが、より学際的な視点からまとめた新たなコレクションの必要性をもたらしたのです」 - Thomas Ditzinger
今後、この研究分野で革新を起こす国と研究機関はどこだと考えますか?
インテリジェントテクノロジーとロボティクスの研究は、ほぼ世界中に発展していますが、現在これらの分野をリードしているのは米国、ヨーロッパ、韓国、日本の大学や企業です。さらにいくつかの研究テーマは、特定の拠点において勢いを増している模様です。
ロボティクスとインテリジェントテクノロジー研究の広範な普及を後押ししている要素の1つに、大学によるMOOC: Massive Open Online Course(大規模オープンオンラインコース)の普及があります。それによって、この分野の教育は以前よりも受けやすくなってきました。しかし、ロボティクスとインテリジェントテクノロジーの基盤は、依然として堅固に工学に根ざしており、これらの新しい科学を専攻する学生は、必要とされる工学の基礎を習得しなければなりません。今日、工学研究科に入りロボット工学の修士号・博士号課程を選択する大学院生の数は増加しており、またこれらの課程を履修する機会自体も、世界で大幅に増加しています。
我々はまた、多くの新興市場、特に中国とインドにおいてロボティクスとAIの研究が急速に発展しているのを目の当たりにしています。現在もこの分野を支配しているのは米国、日本、韓国ですが、2025年には中国が米国に追いつき、最終的には追い越すとの見方が一般的となっています。
Intelligent Technology and Roboticsコレクションは、既存のシュプリンガーネイチャー・イーブックス Engineeringコレクション、Computer Scienceコレクションと比較して、どの点で差別化されていますか?
新しいコレクションは、インテリジェントテクノロジーにのみ焦点を当て、派生する元となったEngineeringコレクションに比べてはるかに分野横断的なものとなっています。インテリジェントテクノロジーの研究は、学際性と応用性が高く、極めて速いスピードで進展しています。このコレクションは、地球に大きな影響を及ぼす可能性のある様々な新技術をカバーしているので、工学とコンピュータ科学に対する影響力だけでなく、物理学、医学と健康、脳科学、その他多くの研究分野にも影響力があります。EngineeringコレクションとComputer Scienceコレクションは共に、多くの理論とアルゴリズムを収載していますが、この新しいコレクションは、これらの確立された理論から進化した応用、技術、デバイス(ロボットなど)を網羅しています。たとえば、シュプリンガーのComputer Scienceコレクションでは人工知能に関するタイトルを収録していますが、新しいコレクションでは計算知能の応用(応用AI)をクローズアップしたタイトルが収録されます。
新たなコレクションが学界にもたらすメリットはありますか?
学際的なアプローチを採用したIntelligent Technology and Roboticsコレクションは、複数のブックタイプ(うち85%がモノグラフとプロシーティング)で構成されており、高い研究指向性を確保しつつも、幅広い読者にとって魅力あるものになっています。
「新コレクションは2019年に375タイトルをリリースし、さらに2020年に向けて大幅に拡大していく予定です。また、コレクションの一環としてインタラクティブコンテンツのレベルを向上することにも注力します。ロボティクスの研究コミュニティは、ビデオコンテンツに対する受容性が最も高いコミュニティの1つであり、また動画というフォーマットとの適合性が非常に高いことから、コレクションを補完するものとして、今後数年間に様々なビデオパッケージを開発する予定です。」- Thomas Ditzinger
2019年刊行タイトルのハイライトを教えてください
まず、刊行予定のmajor reference workである Humanoid Robotics: A Reference が挙げられるでしょう。また、Big Data for the Greater Good、Industry 4.0: Industrial Revolution of the 21st Century、 および Robot Operating System (ROS)も、今日のこの分野における最新のテーマを反映しています。
コレクションには、Control Engineering や、Choice誌のOutstanding Academic Titleに選定されたRobotics(第2版)など、役立つテキストブックも含まれています。これらは当コレクションを、研究者だけでなく教員や学生にとっても魅力的なものにしています。シュプリンガーネイチャーは国際的な研究コミュニティをサポートするだけでなく、将来にインテリジェントシステムの創造に携わる可能性のある、多くの若い学生を教育する役割も果たすことを目指します。
この記事の原文(英語)は2018年8月13日に行われた、Dieter Merkle と Thomas Ditzinger のインタビューを元に、Director of Edible Contentの Emma Warren-Jonesによって執筆されました。
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