[プレスリリース] 電池の謎の解明からボルネオ霊長類の調査までー未来を拓く地方協奏プラットフォーム「未来博士3分間コンペティション2020」のオンライン大会の受賞者を発表
日本の大学に在籍する博士課程の学生が3分間で自身の研究をオンライン上でわかりやすく伝えることを競い合うスピーチ大会をシュプリンガー・ネイチャーが支援しました。
東京 2020年12月3日
今年で第6回目となる未来博士3分間コンペティション2020は、2020年11月21日に今回初めてオンライン開催されました。今大会では、全国から集まった博士課程の学生が3分間で研究ビジョンを発表するためにオンラインのステージに立ち、次世代の研究者たちの多様性に富んだ活躍を見ることができました。本大会は、「未来を拓く地方協奏プラットフォーム(HIRAKU)」(代表機関:広島大学)が主催し、シュプリンガー・ネイチャーは広報面などで全面的にサポートしました。
今回は、オンライン開催ということもあり、世界中からの参加が可能となり、当日は、世界14カ国から合計でおよそ500人が聴衆として参加しました。応募者は、それぞれ質が高く、興味深い研究テーマを持って大会に臨みました。今大会では、電池の研究、ボルネオ霊長類の研究、空気から水を作る方法に関する発表をした研究を審査員が評価し、それぞれの発表者を表彰しました。
日本語部門は、JST主催のサイエンスアゴラ2020にてライブ配信されました。
日本語部門の最優秀賞を受賞したのは、山口大学の山田 耕輝氏で、発表タイトルは、「光を使って電池の謎を解明!~完璧な電池にむけて~」でした。山田氏は、さらにマツダ動画賞を受賞しており、ダブル受賞となりました。
山田氏は、受賞の喜びを以下のように述べています。
「社会のニーズを追って研究する私たち研究者にとって、社会からの共感を得るということは非常に重要なことです。3分間という短い時間で、自分の複雑な研究を分かり易く、魅力的に伝えるにはどうすれば良いか、普段とは全く異なる視点で自分の研究と向き合いことで準備を行いました。その結果、多数の応募者の中から「マツダ動画賞」に加え「最優秀賞」を受賞できたことを非常に光栄に思います。本大会に参加し、凝り固まりがちな研究者の思考を、社会という広い視点から見直すことで、研究者として大きく成長することができたと感じています」
英語部門の最優秀賞を受賞したのは、京都大学のKenneth Keuk(ケネス・クック)氏で、発表タイトルは、「Cheesy epidemiology: studying the biodiversity-disease relationship in Bornean primates」でした。Keuk氏は、さらにシュプリンガー・ネイチャー賞を受賞しており、ダブル受賞となりました。
Keuk氏は、受賞の喜びを以下のように述べています。
「科学は、万人に届いてこそ最高のものです。京都大学霊長類研究所の国際共同先端研究センター(CICASP)で「未来博士3分間コンペティション2020」という大会があることを知りました。一秒たりとも無駄にできない限られた時間の中で、より多くの人に向けて効果的な発表できたことは、とても楽しい挑戦でした。
実は初めて制作したビデオだったので、最終選考に残ったのは正直驚きました。オンライン会議で必要になった際に、手縫いで作った自作のグリーンスクリーンを使い、録画して、ファイナル大会に挑むことは冒険でした。シュプリンガー・ネイチャー賞および英語部門の最優秀賞を受賞できたことは、光栄であり、多くの人が、私の発表によって野生にある病気を研究することの重要性について理解が深まったことを願っています」
日本語部門のNatureダイジェスト動画賞、ならびに中外テクノス動画賞およびオーディエンス賞を受賞したのは、広島大学の森山 教洋氏で、発表タイトルは、「空気から水をつくる膜分離技術」でした。
森山氏は、受賞の喜びを以下のように述べています。
「この度はNatureダイジェスト動画賞を頂き、誠にありがとうございます。海水の淡水化や河川水の濾過など、液体の水を膜で精製する技術はすでに実用化されています。しかし、こういった技術は液体の水が存在する場所でないと使えないため、水不足問題の完全な解決策にはならないと感じました。本研究では“どこでも水”を達成するべく、空気中に存在する微量の水に着目し、膜で分離・回収するシステムを開発しました。世界中のどこでも飲料水がつくれる未来を目指して、実用化に向けた一層の努力をしたいと思います 」
今回の大会では、募集対象を全国の博士課程後期学生に拡大し、その結果24の大学から62件の応募がありました。動画審査を勝ち抜いた20人のファイナリストは、日本語部門ならびに英語部門それぞれのファイナル・ステージで1枚のスライドとともにオンラインで口頭発表を行いました。審査委員会は、研究のビジョンや魅力、わかりやすさなどのコミュニケーション力の観点から、プレゼンテーションを審査しました。
シュプリンガー・ネイチャーの日本の代表取締役社長であるアントワーン・ブーケは、英語部門の審査員として参加し、次のように述べています。
「今回初めてオンラインで開催された未来博士3分間コンペティションは、完全にデジタル化されたオンラインフォーラムでの発表に適応する必要があったため、学生の皆さまにとっては、これまでと異なるダイナミックなスキルが試されましたように思います。本大会では、オンラインにもかかわらず、多くの応募者の熱意が感じられました。また、若手研究者たちの高いレベルの研究成果に毎年感銘を受けています。シュプリンガー・ネイチャーは、2017年より本大会に参画しており、新たなスタイルで開催したこのコンペティションを通じて、革新的な研究課題に取り組む日本全国の若手研究者の挑戦を支援できることを嬉しく思います」
広島大学理事・副学長であり、英語部門の審査委員長を務めた 楯 真一氏は、今回のコンペティションを振り返って次のように述べています。
「「未来博士3分間コンペティション」は、博士課程の学生が、自身が進める研究の背景・動機から、期待される研究のゴールまでを3分間でアピールする力を競います。コロナ禍の中で開催した今回のコンペティションは、初めてオンライン開催としました。従来は、中四国の学生が中心の大会でしたが、オンライン開催としたことで、関東、中部、北陸の大学からも大勢の参加があり、レベルの高いコンペティションでした。オンライン配信映像を上手く使い、ステージ発表とは違った工夫により発表をアピールしていたのが印象的でした」
2008年にクイーンズランド大学が発足した3MT®イベントは、6大陸の400以上の機関で開催されています。シュプリンガー・ネイチャーも支援した2020 Virtual Asia-Pacific 3MT Competitionは、2020年10月1日にオンラインで開催され、オーストラリア、ニュージーランド、オセアニア、北東・東南アジアの大学から前年の3MTファイナリストがオンラインで発表しました。
- 「未来博士3分間コンペティション2020」
- 「未来博士3分間コンペティション2020開催報告」
- 2020 Asia-Pacific 3MT Competition
- プレスリリース:未来を拓く地方協奏プラットフォーム「未来博士3分間コンペティション2020」の挑戦者を募集
HIRAKUは、文部科学省の実施する科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業「次世代研究者育成プログラム」の取組で、「未来を拓く地方協奏プラットフォーム」をテーマに、広島大学が代表機関、山口大学と徳島大学が共同実施機関となり、中国・四国地方を中心とする西日本の国公私立大学、そして多くの企業や公的機関の協力を得て実施しています。詳細は、こちらをご覧ください。
シュプリンガー・ネイチャーは、175年以上にわたり、研究コミュニティ全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、公開するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心を持つすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良サービスを提供します。
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宮﨑 亜矢子
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