[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャー、マックス・プランク協会と過去最大のオープンアクセス書籍出版契約を締結
シュプリンガー・ネイチャーにとって研究機関とのオープンアクセス(OA)書籍出版契約として2つ目であり、オープンリサーチの実現に向け、書籍市場のOA化を推進させるという共通目標へさらに近づくことが期待される。
ロンドン|ハイデルベルク 2022年5月11日
シュプリンガー・ネイチャーは、マックス・プランクデジタルライブラリー(MPDL;Max Planck Digital Library)を窓口として、マックス・プランク協会(Max Planck Society)との間で当社最大となる研究機関とのオープンアクセス(OA)書籍出版契約を締結しました。今回の契約では、幅広い学問分野をカバーするシュプリンガー・ネイチャーのすべての書籍のインプリントを対象にしており、80を超えるマックス・プランク研究所(Max Planck Institutes)に所属する著者にOA資金を提供します。
今回の契約は、当社にとって5番目のOA書籍出版パートナーシップ1、および国レベルのOA書籍出版契約としては2番目2かつ最大の契約であり3、書籍執筆者のOA化に向けた持続可能な移行を推進する非常に重要な一歩であるといえます。調査結果によると、OA書籍は、OA化されていない書籍に比べ、ダウンロード数が10倍、引用回数が2.4倍4に増加したことが報告されています。本契約を通じて、書籍を出版するマックス・プランクの著者にとって、著作が広く普及され、影響力を高める好機となるでしょう。
シュプリンガー・ネイチャーのPresident Greater China & Managing Director BooksであるNiels Peter Thomas(ニールズ・ピーター・トーマス)は、本パートナーシップについて次のように述べています。
「書籍、データ、ジャーナル論文を対象としたオープンリサーチは、科学的発見の進展にとって重要ですが、書籍の持続可能なOA出版化にいたっては、ジャーナルと比べて時間がかかってしまいます。これは、書籍出版における複雑さ、認知度、ポリシー(方針)、資金面の違いといった、コミュニティーが抱えているさまざまな事情によるものです。そうした中、長年にわたるMPDLとのパートナーシップの拡充を通じて、著者が書籍をOAで出版し、OA書籍出版への持続可能なルートを促進し、オープンリサーチという共通目標へ向けて強化できたことを、とても喜ばしく感じております。今回の契約締結は、書籍のOA化を支援するきわめて重要な一歩であり、より多くのパートナーとの協力を通じて、こうした取り組みを一層拡大できることを願っております」
当初の3か年契約(2022年1月1日時点で有効)にもとづき、86のマックス・プランク研究所に所属するすべての著者に対して、書籍のOA出版に必要な書籍出版料(Book Publishing Charge;BPC)に割引が提供されます。MPDLはBPC割引のために機関でまとめられた基金に資金提供し、著者の費用負担がさらに抑えられます。割引と資金提供は、CC BYライセンスのもと、シュプリンガー・ネイチャーの全書籍で適用されます。出版された著作物は、科学、技術、医学、人文・社会科学に及ぶあらゆるコミュニティーから無料で自由にアクセスすることや検索することが可能になり、SpringerLinkを通じて世界中の読者に提供されます。
MPDLのHead of InformationであるRalf Schimmer氏は、次のようにコメントしています。
「今回シュプリンガー・ネイチャーと締結した新たな契約を通じて、当協会の著者のためにペイウォール(有料アクセス)の制約を排除し、研究が広く普及されるよう支援するという、私たちが担う中核的なミッションのひとつをさらに推し進めることができます。必要な費用の多くを分担することにより、より多くの著者が著作物をOA出版できるようになり、読者層を拡大し影響力を強化します。とりわけ、学術コミュニケーション・プロセスにおいて書籍が不可欠な役割を果たしている学問分野において、その効果は大きいでしょう」
シュプリンガー・ネイチャーは、契約やパートナーシップを通じて、引き続き書籍のOA出版の推進において積極的な役割を果たし、学問分野、地域、資金を問わず、すべての著者のOA出版を支援していきます。当社は、2012年のOA書籍出版プログラムの開始以来、最大のOA書籍出版社であると同時に、OA書籍出版モデルのパイオニアでもあります。これまで当社は1,500冊以上のOA書籍を出版し、チャプターは2億回以上5ダウンロードされています。
本契約の詳細については、「MPDL open access books partnership agreement」をご覧ください。 シュプリンガー・ネイチャーの書籍のOA化に関する詳細は「Open access books & chapters」をご覧ください。また、OAPEN財団との提携など、書籍著者のためのOAリソースの開発も行っています。シュプリンガー・ネイチャーのオープンサイエンスへの取り組みは、「A pioneer in the field of open research」とSpringboardでご覧いただけます。
オープンリサーチに関する基礎や用語解説(日本語)は、「オープンリサーチとは?基本コンセプトと取り組み」をご覧ください。
編集者への注記
1シュプリンガー・ネイチャーは、これまでにLYRASIS、UNESCO、カリフォルニア大学バークレー校、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)などのパートナーと5つのOA書籍の契約に合意しています。
2 当社は、カリフォルニア大学バークレー校図書館と初の機関レベルのOA書籍出版契約を締結しました。
3 対象機関数および期待されるアウトプット別
4 Diversifying Readership Through Open Access | Open research | Springer Nature
用語解説
- オープンアクセスとオープンリサーチ:オープンアクセス(OA)とは、ジャーナル論文や書籍などの研究成果をオンラインで即時に無料で利用できるようにし、デジタル環境でフルに利用する権利も提供します。OAコンテンツはすべての人に公開され、アクセス料は無料です。
オープンリサーチは発表論文の垣根を超え、データからコード、さらにはオープン査読にいたる研究成果すべてを対象とします。すべての研究成果を可能な限りオープンなものとしてアクセスできるようにすることにより、研究のインパクトを高めるとともに、世界で最も重要な課題の一部の解決に役立てることができます。 - CC BY:Creative Commons BY(CC BY;クリエイティブ・コモンズ(表示))ライセンスとは、利用可能なライセンスのなかで最もオープンなものであり、OAに関する業界の「最高基準」であると考えられています。また、多くの資金助成機関からも推奨されています。CC BYは、原著者としての自身のクレジットを表示することを条件として、営利目的も含め、他者による自身の研究の配布や再編、調整、それを基盤とした研究を認めるものです。それにより、ライセンスを取得した資料の普及と利用を最大限に強化します。OAオプションを提供しているシュプリンガー・ネイチャーのジャーナルは、すべてCC BYライセンスを提供しており、現在ではシュプリンガー・ネイチャーの完全なOAジャーナルの大多数で既定のライセンスとされています。さらに、OA書籍やOAチャプターに関しても、CC BYが既定のライセンスとされています。ほかのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスについては、リクエストに応じて提供しています。
シュプリンガー・ネイチャーは、Springer、Palgrave Macmillan、Apressの各社から書籍や論文集をOA出版しています。2011年に初めて書籍のオープンアクセス出版を試験的に開始し、オープンアクセス書籍出版のパイオニアとして貢献しています。現在、当社のオープンアクセス書籍のポートフォリオには、あらゆる学術分野を網羅する1,500冊以上の書籍が含まれ、世界中で2億冊以上のチャプターがダウンロードされています。@SN_OAbooksをフォローいただくと、OA書籍に関する最新情報をご覧いただけます。
研究活動
シュプリンガー・ネイチャーはこの分野において、Diversifying Readership in OA books (2020),The Future of OA Books (2019) 、The OA Effect (2017)など、OA書籍のインパクト、知名度、強みについてより広く、よりニュアンスのあるレポートを多数発表しています。
シュプリンガー・ネイチャーは、175年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、出版するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心をもつすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良なサービスを提供します。
学術出版社として、シュプリンガー・ネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャー・ポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。
詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。
マックス・プランク協会は、自然科学、生命科学、人文科学の分野で基礎研究を行っています。1948年の設立以来、18人のノーベル賞受賞者が誕生しています。86のマックス・プランク研究所と施設を有するマックス・プランク協会は、ドイツ科学の国際的な旗手であり、5つの外国機関に加え、アメリカのプリンストン大学、フランスのパリ大学サイエンス・ポ、イギリスのユニバーシティー・カレッジ・ロンドン、日本の東京大学などの研究機関と共同で20のマックス・プランク・センターを運営しています。連邦政府と州政府から均等に資金提供を受けているマックス・プランク協会は、2018年の年間予算が18億ユーロでした。詳細な情報は、www.mpg.de/enをご覧ください。
マックス・プランク・デジタル・ライブラリー(MPDL)は、マックス・プランク協会内の中央科学サービスユニットで、その研究機関とその学者・科学者に研究情報、ウェブベースの学術コミュニケーションのサポート、研究ツールや研究データの管理、ソフトウェアのライセンス供与に必要なデジタルインフラの戦略立案、開発、運営に取り組んでいます。
宮﨑 亜矢子
シュプリンガー・ネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com
※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。
英語プレスリリース:Partnership with Max Planck Society marks Springer Nature’s largest open access book deal