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【プレスリリース】シュプリンガーネイチャー、日本の大学との転換契約を拡大し、オープンアクセスへのさらなる移行を推進

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研究大学コンソーシアムとのパイロット転換契約の拡大および日本における新たな転換契約モデルの発足により、2024年中にオープンアクセス論文が前年の2倍以上出版される見込み。

ロンドン|東京 2024年1月22日

このたび、シュプリンガーネイチャーは、2023年に日本において導入した革新的なパイロット転換契約を拡大し、本契約に参加する、研究大学コンソーシアム(RUC;Research University Consortium)加盟大学が、10校から21校に増加します。これにより、参加機関のいずれかに所属する研究者は、シュプリンガーネイチャーが出版する2000誌以上のハイブリッドジャーナルでオープンアクセス(OA;Open Access)出版するための資金援助を受けることができます。また、本契約の一環で、Springer、Palgrave Macmillan、Adis のポートフォリオおよび Academic Journals on nature.comのジャーナルへのアクセスも所属機関の研究者に提供します。*1


さらに、RUC以外の規模が比較的小さな機関もOA出版の恩恵を受けられるよう、当社は、2024年に日本で新たな転換契約モデルJ-SPRINTA(Japan Springer Research Institute Transformative Agreement;ジェイ・スプリンタ)を立ち上げ、当初は13大学が参加します。この新しい契約モデルでは、Springerジャーナルパッケージの購読の有無にかかわらず、RUC以外の機関も3年間の転換契約に参加できます。本契約により、研究者は、当社のハイブリッドジャーナルにおいて、OA出版費用の援助を受けることができます。また、比較的安価な追加費用により、シュプリンガーネイチャーのジャーナルへのアクセスが可能になります。そのため、従来のSpringerジャーナルパッケージと比較して、新たな転換契約モデルは費用効率が高くなります。J-SPRINTAの契約対象となるのは、年間5報以上の論文を出版する見込みのある機関です。


RUCのパイロット転換契約およびJ-SPRINTAは、参加機関に所属する研究者が出版する研究論文をすべて、または一定数をOA化する機会を提供することで、各機関に適した速度でOAに移行できるようにします。たとえば、東京大学を含むRUCの7つの大学とJ-SPRINTAの3つの大学に所属する著者*2の論文のすべてがゴールドOAで出版されます。さらに、24の学術機関(RUCの14機関、J-SPRINTAの10機関)は、部分的な移行契約に合意しており、参加機関に所属する著者の論文数の約50%*3がOAで出版されます。


RUC幹事機関である自然科学研究機構の小泉 周(こいずみ・あまね)特任教授は、次のように述べています。

「日本において、当初10大学からはじまったシュプリンガーネイチャーとの画期的な転換契約が、このように多くの大学に広がりをみせ、日本からの論文発表のオープンアクセス化が進んでいることを実感しています。日本政府は、即時100%オープンアクセスの方針を示しており、各大学においても、研究力強化にむけて、今後、より一層のオープンアクセスの推進に期待したいです」


シュプリンガーネイチャーのVice President Sales Japan, Southeast Asia and Oceaniaであり、シュプリンガーネイチャー・ジャパンの代表取締役社長であるアントワーン・ブーケは、次のように述べています。

「シュプリンガーネイチャーが日本の研究機関との転換契約を拡大し、小規模な研究機関にも門戸を開くJ-SPRINTAを立ち上げたことで、OAへの移行をさらに推進できることを嬉しく思います。日本の研究機関に適した柔軟な契約モデルを用いることで、2年間で当社の転換契約への参加機関は10校から34校に増加し、これにより、当契約を通じて年間で合計1,800報以上のOA論文が当社から出版されることが可能になります」

「日本におけるパイロット転換契約の最新データによると、OA論文は、非OA論文に比べて、平均で6倍以上ダウンロードされ、Altmetricのアテンション・スコア(注目度)は約8倍高く、これは当社の世界平均と同等かそれ以上です。日本のニーズに合わせたこの枠組みによって、より多くの研究者が自身の研究をOA出版できるようになり、日本の研究の世界的な認知度が高まることを喜ばしく思います。日本の研究者は、シュプリンガーネイチャーのジャーナルへの持続的なアクセスが可能になるとともに、自身の研究の被引用数およびダウンロード数の増加という恩恵を受けることができます」


新たな契約は、2024年1月から開始し、2024年中には、パイロット転換契約とJ-SRPINTAをあわせ、合計1800報以上の論文がOA出版される予定です。これは、転換契約を通じて、2023年に当社から出版された日本の研究機関によるOA論文数の約2倍に相当します。また、このOA論文の出版数は、大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE;Japan Alliance of University Library Consortia for E-Resources)に加盟する大学の研究者が当社と出版する年間OA論文の約30%を占めます。これらシュプリンガーネイチャーの転換契約には、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、および名古屋大学などの国立大学、早稲田大学、東京医科大学、および立命館大学などの私立大学、ならびに沖縄科学技術大学院大学といった大学院大学が参加しています。当社の参加機関一覧は、「日本における転換契約」のページで公開しており、研究者は自身が所属する機関が転換契約の対象になっているかをご確認いただけます。

本契約への参加機関は、現在アクセス可能なすべての既存のジャーナルへの閲覧権を保持します。そのほかのRUC加盟大学および政府研究機関を含むRUC以外の機関(年間5報以上出版の見込み)も、本契約への参加が可能です。


*1 参加機関は、現在購読しているジャーナルタイトルにアクセスできます。

*2 転換契約の対象となるハイブリッドジャーナルにおいて、OA出版費用の援助を受けることができるのは、論文の責任著者になります。

*3 論文数は前年度の論文数にもとづいて算出されています。


編集者への注記

転換契約に参加している機関については、「日本における転換契約」のページでご覧いただけます。

関連リンク

【共同プレスリリース】研究大学コンソーシアム(RUC)のメンバーを中心とする国内10大学がシュプリンガーネイチャーとオープンアクセス論文出版の促進に関する合意書に署名(2022年11月21日)

用語解説

  • 転換契約:一般的には、論文の閲覧のために大学などが出版社に対して支払う費用を、論文出版のための費用(論文掲載料、APC;Article Processing Charge)へと段階的に転換させ、それによって論文のオープンアクセス出版の拡大を目指す契約のことを指します。
  • オープンアクセス(OA;Open Access):研究成果が出版時に無料でアクセスすることを可能にするための一連の原則と実践方法。OAは、ジャーナルに掲載された論文や書籍などの研究成果をオンラインで無料で即時利用できるようにし、デジタル環境でフルに利用する権利を提供します。
  • ハイブリッドジャーナル:購読型ジャーナルのうち、受理された論文をゴールドオープンアクセスで出版するオプションを著者に提供するジャーナル。オープンアクセスで出版する場合には、APCが発生します。
  • ゴールドオープンアクセス(ゴールドOA):出版社のプラットフォームにおいて、論文や書籍をオープンアクセスで出版するルートです。ゴールドOAで出版された論文は、掲載後ただちにオープンアクセスとなり、プラットフォーム上にて無料で閲覧可能となります。ゴールドOAでは、原稿編集(コピーエディティング)や組版後の最終公開版(VOR;Version of Record)にアクセスできるようになります。ゴールドOAの出版は、論文掲載料(APC;Article Processing Charge)や転換契約によって賄われています。
  • 論文掲載料(APC;Article Processing Charge):オープンアクセス(OA)の論文に対するAPCは、査読からコピー編集、専用サーバーでの最終論文のホスティングまで、出版プロセスのすべての段階においてさまざまなサービスをカバーしています。これに加えて、こちらの料金により、論文がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもと、オープンアクセスで公開され、すべての読者がすぐに利用できるようになります。
    出版にはコストがかかります。購読ジャーナルは、コンテンツにアクセスするための料金の徴収によって出版費用がカバーされています。ゴールドオープンアクセスのコンテンツは、どなたでも無料で自由にアクセスできるため、出版費用は論文掲載料(APC)によって賄われます。APCは、論文が受理されてから出版されるまでの間に支払われ、それぞれの出版社、ジャーナル、分野によってAPCが異なります。また、掲載料や出版料を学会などのスポンサーが負担することで、APCを徴収しないジャーナルもあります。APCには、論文全文への永続的、即時的かつ世界中からのアクセスの提供に加えて、下記が含まれます。
    • 編集作業:査読、管理サポート、コンテンツの委託、ジャーナルの開発。
    • 技術的なインフラストラクチャーとイノベーション:オンラインジャーナルシステムやウェブサイトの開発、メンテナンス、運用。
    • 論文の制作:論文のフォーマット、マークアップ(タグ付け)、インデックスサービスへの登録。

研究大学コンソーシアム(RUC:Research University Consortium)について

日本の研究の現況において、トップ層だけでない研究大学群としての層の厚みを増し、「知の集積」を強化することが喫緊の課題となっています。そのような現況において、研究力強化に取り組む大学及び大学共同利用機関法人がコンソーシアムを形成し、各大学等における先導的取り組みや課題の発信・共有によりネットワーク化を推進すること、それらを全国的に普及・定着することを目指して、「研究大学コンソーシアム(RUC)」が設立されました。2017年8月4日の第1回全体会議の開催を以て発足以来、研究力分析や国際情報発信、分野融合の課題に優先的に取り組んでおり、研究力強化の方策・体制の整備等に関する共通の課題について、必要に応じて文部科学省関係部局を交えた俯瞰的な討議を行っています。

2023年4月時点で、RUCは41の大学等機関で構成されています。 

詳細につきましては、RUCウェブサイトをご覧ください。

シュプリンガーネイチャーについて

シュプリンガーネイチャーは、180年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、出版するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心をもつすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良なサービスを提供します。

学術出版社として、シュプリンガーネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャーポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。

詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。

本件に関するお問い合わせ

宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

英語プレスリリース:Springer Nature expands Transformative Agreements with Japanese universities driving further transition to Open Access

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