【プレスリリース】オープンアクセスへの移行において重要な役割を担う転換契約
シュプリンガーネイチャーのデータから、すべての学術分野において転換契約がオープンアクセスの成長を3倍に加速させていることが明らかに
ロンドン|ベルリン|ニューヨーク 2023年6月5日
シュプリンガーネイチャーが発表した新たなデータ[1]により、転換契約(TA;Transformative Agreement)がオープンアクセス(OA;Open Access)へのグローバルな移行を推進する重要な役割を担っていることが明らかになりました。転換契約は、シュプリンガーネイチャーのハイブリッドジャーナル[2]においてオープンアクセス論文が増加しているおもな要因となり、すべての学術分野においてオープンアクセスに関する公平性を実現しています。
今回のデータから、次のことが明らかになっています。
- 2022年、転換契約に参加している研究機関の著者がシュプリンガーネイチャーのハイブリッドジャーナルに出版したオープンアクセスの研究は、転換契約に参加していない研究機関の著者が同じくハイブリッドジャーナルに出版したオープンアクセスの研究と比較して、3倍の速度で増加しました[3]。
- 2017年以降、シュプリンガーネイチャーが締結した契約数の増加により、当社のハイブリッドジャーナルのポートフォリオに出版されたオープンアクセスのコンテンツは40%近く増加しました。
- また、転換契約は、人文・社会科学(HSS;Humanities and Social Sciences)分野の著者によるオープンアクセス出版を可能にする有効な手段であることも明らかになっています。現在では、当社のハイブリッドジャーナルに出版された人文・社会科学分野のオープンアクセスコンテンツの90%以上が転換契約を介して出版されており、転換契約を介さずに出版された人文・社会科学分野のオープンアクセスコンテンツを上回る速度で増加しています[4]。
このことから、あらゆる分野の著者が、自身の研究をゴールドオープンアクセスで出版し、誰もがすぐに読んで利用できるようにすることで、利用とビジビリティ(知名度)の向上がもたらすメリットを実感している著者が増えているといえます。たとえば、研究をゴールドオープンアクセスとして出版した場合、ダウンロード数は6倍に、引用数は1.6倍に、オルトメトリックアテンションスコア(Altmetric Attention Score)は4.9倍に増加します。
シュプリンガーネイチャーのVP Open AccessであるCarrie Webster(キャリー・ウェブスター)は、次のようにコメントしています。
「研究は、グローバル社会が直面する課題を把握し、対処するうえで極めて重要な役割を担っています。すべての研究者がオープンアクセスの論文を出版し、その利点を活かすことを可能にするため、さらに優れた良い方法を見つけ出すことが重要です。研究成果にアクセスおよび再利用し、ならびに研究基盤として保証することにより、社会が直面している最も急を要する問題に取り組み、対処する能力を有する人々の手に、研究成果を迅速に届けることができるのです」
「私たちは、転換契約こそが、その実現に向けて利用可能な最も重要な手段であると考えています。今回の最新のデータが裏づけているように、すべての学術分野と地域において迅速で持続可能なオープンアクセスへの大規模な移行を成功させるうえで、転換契約が担っている役割は明確です。転換契約は、参加している研究機関のすべての論文著者によるオープンアクセス出版を可能にするものであり、かつては存在していなかった選択肢を実現するものなのです」
当出版社では、全世界で40件以上の転換契約を締結しています[5]。そのなかには、キプロスとデンマーク、スロバキアにおいて最近締結した国家レベルの契約や、メキシコのCINVESTAVと締結した研究機関契約が含まれています。現在では、転換契約を通じ、全世界で3,500以上の研究機関の論文著者をサポートしています。シュプリンガーネイチャーでは、研究者に対し、出版に関する最も包括的で幅広いポートフォリオを提供しています。さらに、当社の完全オープンアクセスポートフォリオは出版社のなかで最も引用数が多く、ダウンロード数はほかの完全オープンアクセス出版社のジャーナルの5倍に達しており、研究者に恩恵をもたらしています。当社では、新たなジャーナルや書籍、ソリューションを通じ、オープンアクセスへのルートを引き続き進展させてまいります。シュプリンガーネイチャーでは、研究の活発化とオープンサイエンスの発展に引き続き重点を置き、研究コミュニティーにサービスを提供しています。オープンアクセスと研究に対する当社のコミットメントに関する詳細については、こちらをご覧ください。
オープンリサーチに関する基礎や用語解説(日本語)は、「オープンリサーチとは?基本コンセプトと取り組み」をご覧ください。
注釈
[1] 2017~2022年に有効であったシュプリンガーネイチャーの全TAからのデータを分析。OAの成長とは、TAに含まれるSpringerの全ポートフォリオ(Springer、Adis、Palgrave、ならびにacademic journals on Nature.comすべて含む)における成長を指します。
[2] TAを介したHSS分野のOA出版の利用率は2017~2022年の間に10%から30%に増加。STEM(Science, Technology, Engineering and Medicine)分野の利用率は2017~2022年の間に3%から11%に増加。
[3] 2021年との比較。
[4] 2017年以降、TAを介したHSS分野のOAコンテンツは20%増加(TAを介さずに出版されたHSS分野のOAコンテンツの増加率は5%)。
[5] Nature TAのほか、国家レベルの契約、国内地域契約および研究機関契約を含みます
- 転換契約:一般的には、論文の閲覧のために大学などが出版社に対して支払う費用を、論文出版のための費用(論文掲載料、APC;Article Processing Charge)へと段階的に転換させ、それによって論文のオープンアクセス出版の拡大を目指す契約のことを指す。
- オープンアクセス(OA;Open Access):研究成果が出版時に無料でアクセスすることを可能にするための一連の原則と実践方法。OAは、ジャーナルに掲載された論文や書籍などの研究成果をオンラインで無料で即時利用できるようにし、デジタル環境でフルに利用する権利を提供します。
- ハイブリッドジャーナル:購読型ジャーナルのうち、受理された論文をゴールドオープンアクセスで出版するオプションを著者に提供するジャーナル。オープンアクセスで出版する場合には、APCが発生します。
- ゴールドオープンアクセス:出版社のプラットフォームにおいて、論文や書籍をゴールドオープンアクセスで出版するルートです。原稿編集(コピーエディティング)や組版後の最終公開版(VOR;Version of Record)。ゴールドOAで出版された論文は、掲載後ただちにオープンアクセスとなり、プラットフォーム上にて無料で閲覧可能となります。ゴールドOAでは、原稿編集(コピーエディティング)や組版後の最終公開版(VOR;Version of Record)にアクセスできるようになります。ゴールドOAの出版は、論文掲載料(APC;Article Processing Charge)や転換契約によって賄われています。
- 論文掲載料(APC;Article Processing Charge):オープンアクセス(OA)の論文に対するAPCは、査読からコピー編集、専用サーバーでの最終論文のホスティングまで、出版プロセスのすべての段階においてさまざまなサービスをカバーしています。これに加えて、こちらの料金により、論文がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもと、オープンアクセスで公開され、すべての読者がすぐに利用できるようになります。
出版にはコストがかかります。購読ジャーナルは、コンテンツにアクセスするための料金の徴収によって出版費用がカバーされています。ゴールドオープンアクセスのコンテンツは、自由に利用できるため、費用は論文掲載料(APC)によって賄われます。
APCは、論文が受理されてから出版されるまでの間に支払われ、それぞれの出版社、ジャーナル、分野によってAPCが異なります。また、掲載料や出版料を学会などのスポンサーが負担することで、APCを徴収しないジャーナルもあります。
APCには、論文全文への永続的、即時的かつ世界中からのアクセスの提供に加えて、下記が含まれます。- 編集作業:査読、管理サポート、コンテンツの委託、ジャーナルの開発。
- 技術的なインフラストラクチャーとイノベーション:オンラインジャーナルシステムやウェブサイトの開発、メンテナンス、運用。
- 論文の制作:論文のフォーマット、マークアップ(タグ付け)、インデックスサービスへの登録。
シュプリンガーネイチャーは、180年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、出版するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心をもつすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良なサービスを提供します。
学術出版社として、シュプリンガーネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャーポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。
詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。
宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com
※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。
英語プレスリリース:Transformative Agreements playing vital role in OA transition