【Springboard】エディターの多様性:真に包括性のある(インクルーシブな)出版環境を実現するため、変化を推進する
シュプリンガーネイチャーの学術エディター*1の多様性に関する2023年度ベンチマーキングレポートを公開しました。
2024年4月29日
著者:Rucha Kapare(ルチャ・カペール), Biz Turnell(ビズ・ターネル)と Sowmya Swaminathan(ソーミヤ・スワミナサン)
研究分野の多様性が変化するなか、ジャーナルポートフォリオ全体における人口動態の現状を明確に認識し、理解することが、出版社とエディター(編集者)に共通の責任として急務となっています。このような認識をもつことが、真に包括的で多様性を反映した出版環境を実現する方法のひとつとなります。
当社は、業界をけん引する学術出版社として、知識の創出と発見、利用を妨げる障壁を取り除くことを公約としてかかげています。また、自社の出版ポートフォリオ全体における人口動態を深く理解することにより、学習と学問における成果の公平性の向上に貢献することを目指しています。このたび、当社はその公約の一環として、シュプリンガーネイチャーにおけるエディターの多様性について調査した初のベンチマーキングレポートを発表しました。同レポートでは、約3,000誌のシュプリンガーネイチャーのジャーナルを編集する100,000人以上の学術エディターからなる当社のコミュニティーの内部データを利用し、2023年の編集業務における多様性について、スナップショットを提示しています。同ベンチマーキングレポートは、年次プログレスレポートやサステナビリティーレポートとともに、情報と証拠にもとづくアプローチの採用を通じて出版および編集チーム内での多様性を改善し、裏づけるうえで、重要なデータを提示するものです。
本レポートの公開に際し、シュプリンガーネイチャーのChief Scientific OfficerであるRitu Dhand(リトゥー・ダーンド)の序文を編集したものを以下に紹介します。レポート全文は、https://stories.springernature.com/journal-editor-diversity/index.html からご覧いただけます。
「科学・研究分野は発展し続けており、グローバル化と多様化が進んでいます。私たちは、特に中国において、成果の量と質双方で西側諸国を上回っており、研究が生み出される地域に大きなシフトが生じていることを目の当たりにしてきました。
真に包括的な出版業界は、グローバルに、そして多様性の多次元にわたって、あらゆるコミュニティーを代表するものでなければなりません 。当社の戦略に包括性が取り入れられている理由は、まさにそこにあります。私たちが世界で最も差し迫っている社会的な課題に取り組もうとしているのであれば、私たちはグローバルな研究を代表する存在とならなければならないのです。
このことは、当社の意思決定者にとっては特に重要となります。シュプリンガーネイチャーは、あらゆる学術分野と全世界のあらゆる地域において、当社ポートフォリオ全体に属する100,000人以上の学術エディターをサポートしています。各エディターは、それぞれのジャーナルにおける出版業務の包括性を推進し、各々のコミュニティーを代表する存在とするための重要な役割を担っています。
当然ながら、変化を推進するためには、まず現在の人口動態について理解しなければなりません。そこで当社は、エディターの地理的な多様性とジェンダーの多様性について調査した初のベンチマーキングレポートを公開しました。当社では、多様性に関して、より幅広い特性に関するレポートを作成するという大きな目標をかかげています。しかし、まずその目標を達成するための第一歩として、当社すべてのジャーナルにおける自己申告による地理的データや推定されるジェンダーなど、ただちに入手可能なデータについて発表しています。
今回の初期データは、業界全体において私たちが把握していた内容が真実であることをあらためて裏づけるものです。編集に関する意思決定者は、それぞれが従事する多様性に富んだ研究コミュニティーを完全に代表する存在であるとはいえず、この問題に対処するために成すべきことはたくさんあります。その課題の大きさは、当社のような規模の出版社にとっては重いものですが、それでも私たちは、 エディターがジャーナルを多様化できるよう積極的にサポートしています 。当社が最近、新たに募集したエディターは、全体として地域の多様性を代表する性質が強くなっています。また、Scientific Reports のケーススタディーからは、エディターとして招へいした女性の増加により、ポジティブな影響が生じていることが明らかになっています。
当社は、私たちが学んだ内容を共有することにより、業界全体に情報を与え、刺激し、前向きな行動を推進したいと考えています。そのため、当社では、研究者の認識と経験に関する2023年報告書や、Research Publishing HubにおけるDEI(Diversity, Equity and Inclusion;多様性、公平性、包括性)など、DEIに関する研究やデータ、リソースに引き続き投資しています。また、今回のレポートの一部として、編集に関するベストプラクティスの事例もまとめています。当社は、今後も引き続き、包括性の強化に向けた進捗を追跡し、知見をレビューするとともに、行動にむけた勧告を提示していきます。当社では、科学研究のグローバルな性質と多様性を真に反映し、包括性とリプレゼンテーション(代表性)を実現した出版業界を創出することを目標としています」
シュプリンガーネイチャーはこれまでも、そして、これからも、多様性と公平性、包括性の文化を推進していきます。
*1 大学等アカデミックに属する編集者のこと。
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宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com
本ブログの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。
英語:Editor Diversity: Facilitating change to ensure a truly inclusive publishing landscape