【プレスリリース】女性研究者を支援する第1回「Sony Women in Technology Award with Nature」の受賞者を発表、授賞式を開催
ソニーと Nature は、「Sony Women in Technology Award with Nature」の受賞者を2025年2月5日に東京で行われた表彰式で発表しました。
東京|ロンドン|ベルリン|ニューヨーク 2025年2月5日
ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)と Nature は、「Sony Women in Technology Award with Nature(ソニー・ウィメン・イン・テクノロジー・アワード・ウィズ・ネイチャー)」の初代受賞者を発表しました。この賞は、科学、エンジニアリング、数学を含むテクノロジー分野において、より良い地球と社会を築く画期的な研究をリードするキャリア初期から中期の女性研究者を表彰するものです。研究活動を推進するための賞金 250,000 USドルが3名の受賞者それぞれに授与されます。
本日東京で開催された授賞式において、受賞者である Kiana Aran氏(アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校)、Amanda Randles氏(アメリカ・デューク大学)、Yating Wan氏(サウジアラビア・アブドラ国王科学技術大学)、および審査員特別賞のJiawen Li氏(オーストラリア・アデレード大学)が表彰されました。
<Mid-Career 部門 受賞者>
■Kiana Aran氏(アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校)
Kiana Aran氏は、バイオエンジニアリング分野における功績により選出されました。Aran氏は、フィンガーチップセンサーを利用したウイルス検出の研究に取り組んでおり、人工知能と高度なセンサー技術を組み合わせることで、複数のバイオマーカーを分析し、がんや加齢に伴う神経疾患の早期発見を可能にする方法を探索しています。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のバイオエンジニアリング・薬学教授であるAran氏は、生物学と現代工学の融合によって精密医療の向上をめざす先駆的な研究で知られています。その功績の一つが、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat;クリスパー)を応用した電子チップの開発で、グラフェンを使用し、遺伝性疾患や新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症の早期検出に寄与する技術です。また、研究や起業活動にとどまらず、New Voices for National Academies of Science, Engineering and Medicineなど複数の団体を通じて、テクノロジー分野やリーダーシップにおける女性の役割を高めるために積極的に活動しています。女性エンジニアの指導を行う非営利団体を設立し、国際的な科学協力を積極的に推進することで、ハイテク分野におけるより包括的かつ革新的な未来の実現をめざしています。
審査委員会は、Aran氏について「バイオエンジニアリング分野における功績とビジョンは、患者にとって非常に意義のある現実的なインパクトをもたらす明確な道筋を示しており、素晴らしいものである」としました。また、女性の存在が極めて少ない半導体分野において、ロールモデルとなることをめざすAran氏の熱意も高く評価されました。
■Amanda Randles氏(アメリカ・デューク大学)
Amanda Randles氏は、ウェアラブルデバイスの情報に基づく複数の計算モデルを統合し、各患者固有の心臓血管動態に関する分析結果を提供し、治療戦略を最適化するデジタルツイン技術に関する革新的な研究が評価され、選出されました。
コンピューター科学者であり医用生体工学の研究者であるRandles氏は、デューク大学でRandles Labを主宰し、高性能コンピューティング、機械学習、および疾患診断と治療のための個別モデリングへの貢献で知られています。研究チームは、心疾患の治療を支援するデジタルツイン技術の活用方法の検討を終え、この技法をがんの早期介入に適用する方法を探っています。今回の受賞により、がん治療の進歩につながる革新的なモデリング手法と新たな治療標的の特定方法について研究を深める計画です。
審査委員会は、Randles氏について、「デジタルツインという魅力的な領域において重要なインパクトを生む可能性をもたらしている」とし、「臓器のデジタルツインを医師が検証することでより能動的な介入を可能にするというビジョンは大きなインスピレーションを人々に与える」としました。
<Early-Career部門 受賞者>
■Yating Wan氏(サウジアラビア・アブドラ国王科学技術大学)
Yating Wan氏は、シリコンフォトニクスの研究が称えられ受賞しました。Wan氏の研究は、シリコンチップ上への光源の統合することで、よりエネルギー効率の高いデータ通信と情報処理を実現することに焦点を当てています。
アブドラ国王科学技術大学の助教であるWan氏は、量子ドットレーザー(半導体材料で作られたナノクリスタル)とシリコンフォトニクスを統合するという斬新な手法で知られ、フォトニックチップの商業利用に向けた重要な研究成果を立証しています。同じ目標に取り組むテクノロジー業界の協力者とともに、彼女のチームはこのチップの実用化の方法を探究しています。
審査委員会は、Wan氏がこの分野における新進気鋭の研究者として、「データ通信の未来に大きく貢献し、シリコンフォトニクスセンサーの未来に革命的な変化をもたらす可能性がある」と強調しました。
<審査員特別賞 受賞者>
■Jiawen Li氏(オーストラリア・アデレード大学)
世界中の研究者からレベルの高い応募が寄せられたことを受けて、審査委員会は、Jiawen Li氏に審査員特別賞を授与することを決定しました。
Li氏は、ナノスケールの3Dプリントと光ファイバー技術を組み合わせ、髪の毛ほどの細さの内視鏡を開発しました。この技術は心臓専門医が患者の心臓発作のリスク判定を行う血管検査での活用のほか、予防や個別治療にも応用できます。
バイオメディカル工学者であり、大学で准教授を務めるLi氏は、この命を救う装置を臨床導入する重要なステップとして、この発明の商品化に積極的に取り組んでいます。また、共同研究者とともに、マルチモーダル技術の機能の拡張にも取り組んでおり、部位別の温度や化学的変化といったデータの測定を可能にすると同時に、神経疾患や体外受精といった他領域への応用も模索しています。
ソニーグループ株式会社 執行役 副社長 CTO 北野 宏明(きたの ひろあき)のコメント
「国際的な研究コミュニティにおけるジェンダーの多様性を支持するという明確な目標のもと、2024年3月にこの賞を創設しました。それぞれの分野で、現在、最先端の技術に挑戦している受賞者の皆さんに、大変感銘を受けています。これからも彼らの活動を支援し、このプログラムを今後さらに成長させていきたいと思います」
Nature 編集長 Magdalena Skipper(マグダレーナ・スキッパー)のコメント
「テクノロジー業界の職位において女性が占める割合は、世界全体で3分の1にも満ちません。しかし依然として、世界が直面している最も差し迫った課題に対処するには、研究とテクノロジーの分野に女性がもたらす多様性、創造性、イノベーションが必要不可欠です。こうした理由から、Kiana Aran、Amanda Randles、Yating Wanの各氏による素晴らしい研究を称えられることを誇りに思います。卓越した研究とイノベーションへのコミットメントを体現する今年の受賞者の方々は、研究およびエンジニアリング分野でのキャリアをめざそうとしている次世代の女性たちにとって最高のロールモデルです」
次回の「Sony Women in Technology Award with Nature」の応募受付は、2025年3月6日から始まります。詳しい応募資格については、https://womenintechnology.sony.com/jaをご覧ください。
また、応募受付の開始のお知らせを受け取るには、下記サイトから「Sony Women in Technology with Nature」ニュースレターにご登録ください。
https://natureresearch.formstack.com/forms/women_in_technology_award
本賞に関する情報ならびに募集要項の詳細は、Sony Women in Technology Award with Nature の公式Webサイトをご覧ください。 英語のWebサイトにつきましては、https://womenintechnology.sony.com をご覧ください。
シュプリンガーネイチャーの女性研究者を支援する取り組みについては、「Women in Science」のページをご覧ください。
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詳細については、ソニーグループポータル | ホームをご覧ください。
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ソニーグループ株式会社 広報部
E-mail: Sony.Pressroom@sony.co.jp
宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com
英語プレスリリース:Celebrating the Winners of the Inaugural Sony Women in Technology Award with Nature