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【プレスリリース】日本の研究者が論文出版後に自身の研究成果を共有するために、より多くの支援を求めていることが最新の調査で明らかに

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日本の研究者を対象に実施したシュプリンガーネイチャーの新たな調査によると、回答者の約3分の1が、学術的な出版物や学会発表のほかに、自身の研究の共有の仕方について確信をもっておらず、より広いコミュニティーに向けて研究成果を発信し、影響を及ぼすためには、さらなる支援を必要としていることがわかりました。

東京|ロンドン 2024年4月2日

シュプリンガーネイチャーが日本において実施した研究コミュニケーション*1に関する新たな調査によると、本調査に参加した日本の研究者の約9割が自身の研究成果を広く一般社会に発信したいと考えているものの、約3分の1が過去3年以上、一度も自身の研究を発信したことがないことがわかりました。最新の世界的なデータ*2によると、調査に参加した一般人口の90%近くが科学や科学者を信頼しており、また、別の調査においても、科学者によるコミュニケーションや政策決定への関与を強く望んでいると回答しています*3。したがって、今回の当社の調査結果は、私たちが世界の喫緊の課題に取り組む方法に関する理解を深める機会を逃していることを示唆しており、研究者がより広いコミュニティーに対して研究のコミュニケーションを行ううえで、充分な支援を受けられるようにすることはきわめて重要です。 

本調査は、日本の研究者1000人以上の回答にもとづき、学術ジャーナルや書籍における出版や学会発表以外に、自身の研究や研究成果を広く社会に発信するうえで、研究者の習慣、動機および課題をより深く理解することを目的として実施しました。また、研究者が自らの研究をより広く伝えるために行っていることや、より効果的に行うために必要な支援について調査しました。

本調査によると、70%近くの研究者が、おもにプレスリリースや一般向けの公開講演会を通じて、過去3年以内に少なくとも一度は、自身の研究について発信したことがあると回答しています。しかし、自身の研究に関する情報発信を行うことを決めた研究者のうち、約3分の1の研究者は、それを伝える対象について明確な考えをもっておらず、約80%の研究者は、より広いコミュニティーに効果的に自身の研究内容を伝えるためには、さらなる支援の必要性を感じていることがわかりました。

本調査のおもな結果は次のとおりです:

  1. 日本の研究者は、学術論文や学会発表以外に、自身の研究についてより広い社会に伝えることに高い価値を見いだしている。本調査に参加した日本の研究者の94%が、自身の研究をより多くの人に伝えることが重要であると考えており、87%が自身の研究を共有することに強い関心を示している。また、回答者の21%は、過去3年以内に広いコミュニティーに向けて自身の研究に関するコミュニケーションを行ったことがなく、12%は研究の発信をこれまでに一度も行ったことがないと回答している。
  2. 研究を広く社会に発信する方法として、ほとんどの研究者はプレスリリースか一般向けの公開講演会を選択している。過去3年間に広いコミュニティーに向けて研究のコミュニケーションを行った回答者の64%が、社会的に関心があると思われる研究を発信することを選び、60%は、自身が面白いと思った研究を発信している。回答者の半数以上が、プレスリリース(53%)と一般向けの公開講演会(50%)を自身の研究を発信する方法として選択している。
  3. 研究者は、広いコミュニティーに向けて自身の研究成果を発信する際に、一般社会にも関心を持っていただくことを重視している。研究者が自身の研究成果を発信する際のおもな対象者は、一般市民(73%)、コミュニティー内の研究者(61%)、学生(44%)であったが、政策立案者(15%)や資金配分機関(12%)と回答した研究者は少なく、アウトリーチ活動の成果は、政策への影響や資金配分機関による評価を必ずしも視野に入れていないことが判明した。
  4. 広い社会に向けて研究の発信をする際には、資金配分機関や研究機関の支援や評価が重要な動機となっている。研究のコミュニケーションをより多く実施する動機として、約40ー50%の研究者が、自身の研究が所属機関(51%)や資金配分機関(41%)によって業績として認められたらと回答しており、次いで半数近く(41―45%)が、一般市民や学生から関心を寄せられる、また、雇用プロセスにおいて肯定的な評価をされたら(40%)と回答している。
  5. 広いコミュニティーに向けて、研究の発信を行う際の障壁として、「機会の不足」がおもな課題である。過去3年間に広いコミュニティーに向けて研究の発信をしていない人の半数以上(56%)が、研究に関する発信を妨げている理由は「機会の不足」であると回答している。研究に関する発信を行った人のうち、66%が自身の専門分野以外の方に向けて平易な文章を書くことがコミュニケーションにおけるおもな課題であると回答した。また、77%が、効果的に研究のコミュニケーションを実施するためには、より多くの支援が必要であり、文章作成や口頭発表、映像制作によるメディアへのアウトリーチのスキルなどを向上させるための支援を望んでいることが示されている。

シュプリンガーネイチャーのVice President of Academic Affairsであり、ジャパンリサーチアドバイザリーフォーラム(Japan Research Advisory Forum;JRAF)メンバーの一人のNick Campbell(ニック・キャンベル)は、次のように述べています。

「日本の研究者の多くが、自身の研究を広く社会に発信することのメリットを認識し、それを前向きにとらえていることは、喜ばしいことです。同時に、今回の調査結果は、日本の研究者が直面している課題も明らかにしています。研究成果の発信に対するさらなる支援と、そのような発信を奨励するインセンティブが強く望まれています。研究出版社として、研究者が積極的に一般社会と関わるために必要な関連スキルを身につけることや、コミュニケーション活動の効果を評価するために、どのような支援ができるかについて考える機会が増えています。しかし、研究コミュニケーションの改善には、日本の研究エコシステムのすべてのステークホルダーの賛同が必要です。私たちは、研究機関や資金配分関を含む研究コミュニティーと協力し、私たちがサービスを提供するコミュニティーと関連性の高いトピックについて議論し、認識を高めることに取り組んでいます」

「私たちは、2022年にジャパンリサーチアドバイザリーフォーラム(JRAF)を立ち上げ、研究における日本のニーズに関してより多くの理解を得られるようになりました。今回の調査は、JRAFのメンバー間で議論された発案の一つであり、メディアと一般市民との接点における日本の研究コミュニケーションの現状について理解を深めるためのものです。私たちは、日本の学術コミュニティーと関わることができることを嬉しく思っており、研究者をより良くサポートし、日本の研究をさらに推進する方法を見いだすことができるよう、今後もともに機会を探っていきたいと考えています」

本調査結果は、Figshareで公開しており、クレジット情報を表示のうえ、ご使用いただけます。また、本調査をまとめたインフォグラフィックFigshareで公開しています。

*1 本調査における研究コミュニケーションとは、プレスリリース、メディアインタビュー、 ソーシャルメディア、一般向けの公開講演会など、研究および研究成果のコミュニケーションと発信のことを意味しています。

*2 3M State of Science Index (2023)

*3 Nature News Largest post-pandemic survey finds trust in scientists is high (2024年2月)

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編集者への注記

本調査の詳細は次のとおりです。

  • 「研究者による研究成果の情報発信活動」と題した 本調査は、2023年1月13日ー2023年2月28日に実施し、日本国内の研究者から1063件の有効な回答を得ました。
  • 回答者の所属機関の内訳:
    • 大学・専門学校:63%
    •  企業・産業界:14%
    • 研究機関:13%
    • 病院・クリニック:6%
    • その他:2%
  • 回答者の年齢層の内訳
    • 44歳以下:23%
    • 45ー54歳:31%
    • 55歳以上:46%
  • 本調査は日本語と英語の両方で実施し、97%の回答者が日本語で回答しました。

そのほかの調査結果のまとめ:

  • 研究コミュニケーションによる効果の評価:半数近く(49%)の研究者が、コミュニケーション活動の効果を評価するために、自身の論文の引用を利用しており、次いで研究者との共同研究(35%)、論文のダウンロード数(32%)であった。また、19%がコミュニケーション活動の効果を評価していないと回答した。
  • 研究コミュニケーションに使用する言語と対象者:半数近く(48%)の研究者が日本語のみで広い社会に対して研究の発信を行っており、残りの半数(48%)は、英語と日本語の両方を使用して発信している。72%が研究発信する対象地域を日本であると回答し、35%が世界を対象としていると回答した。

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2022年に開催されたJRAFの議論については、下記をご覧ください。

2023年に開催されたJRAFの議論については、Springboard blog - A snapshot of science communication in JapanおよびNatureダイジェストの記事「研究のインパクト向上へ向けて科学コミュニケーションとAIの活用と課題」をご覧ください。

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そのほか関連するリンク:

シュプリンガーネイチャーのジャパンリサーチアドバイザリーフォーラム(Japan Research Advisory Forum;JRAF)について

シュプリンガーネイチャーは、発見への扉を開き、研究コミュニティーのニーズを理解することで、最高のサービスを提供することに取り組んでいます。その継続的な取り組みの一環として、2021年のUS Research Advisory Councilの発足に続き、2022年には、シュプリンガーネイチャーからの代表者を含む学術界のさまざまな分野の関連メンバーで構成されるJRAFを立ち上げました。

2023年のJRAFメンバーは、次のとおりです。

  • 古田彩(ふるた・あや)氏(日本経済新聞シニアライター、日経サイエンス記者)
  • 原山優子(はらやま・ゆうこ)氏(東北大学名誉教授)
  • 加納圭(かのう・けい)氏(滋賀大学教授)
  • 小泉周(こいずみ・あまね)氏(自然科学研究機構特任教授)
  • 今羽右左デイヴィッド甫(Kornhauser David Hajime)氏(京都大学国際広報室長)
  • 小賀坂康志(おがさか・やすし)氏(日本医療研究開発機構・国際戦略推進部長)
  • 山口潤一郎(やまぐち・じゅんいちろう)氏(早稲田大学教授)
  • アントワーン・ブーケ(Antoine Bocquet;シュプリンガーネイチャー・ジャパン代表取締役社長)
  • ニック・キャンベル(Nick Campbell;シュプリンガーネイチャーAcademic Affairs vice president)
  • マグダレーナ・スキッパー(Magdalena Skipper;Nature 編集長、ネイチャーポートフォリオ チーフ・エディトリアル・アドバイザー)
  • 浦上裕光(うらかみ・ひろみつ)(シュプリンガーネイチャー、academic engagement director)

シュプリンガーネイチャーについて

シュプリンガーネイチャーは、180年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、公開するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心を持つすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良サービスを提供します。

学術出版社として、シュプリンガーネイチャーは、シュプリンガー、ネイチャーポートフォリオ、BMC、Palgrave Macmillan、Scientific Americanなどの信頼されたブランドを有しています。詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。

本件に関するお問い合わせ

宮﨑 亜矢子

シュプリンガーネイチャー

コーポレート・アフェアーズ

E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

英語プレスリリース:Researchers in Japan need more support to share their research findings after publication

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