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[お知らせ] Peer Review Week 2021開催

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Peer Review Week(ピアレビュー・ウィーク)とは、科学の質の維持にピアレビュー(査読)が果たしている重要な役割をたたえるために発足されたグローバルなイベントです。

2021年9月20日

2015年に始まったPeer Review Week (PRW)は、毎年9月に開催されています。2021年のPRWは、9月20日~24日です。このイベントでは、個人、機関、組織が一堂に会し、「どのようなかたちにおいても、優れたピアレビューは学術コミュニケーションにとって不可欠である」という中核的なメッセージを共有しています。

2021年のPeer Review Weekのテーマは、「Identity in Peer Review(査読におけるアイデンティティー)」です。査読における個人と社会的アイデンティティーの役割および学術コミュニティーによる、より多用性・公平性・包括性のある査読を推進することに焦点を当てます。

ネイチャー・ポートフォリオの編集者が監修した、アイデンティティーと研究や学術出版にまつわるさまざまな側面との接点をハイライトした記事一覧については、Celebrating Peer Review Week 2021 at Springer Natureをご覧ください。

BMCのジャーナル編集者が紹介するBMCによる査読の取り組み、査読者の多様性と支援、オープンアクセスのパイオニアとしての方向性については、Peer Review Week 2021 – Opening up Peer Review at BMCをご覧ください。ブログの中では、5つのBMCジャーナル(BMC Public Health、BMC Infectious Diseases、BMC Health Services Research、BMC Cancer、BMC Musculoskeletal Disorders)の査読者の所在地ランキング、Top 10 locations of our reviewers in 2020もご紹介しています。上記のジャーナルのうち、3つのジャーナルにおいて、日本が査読者所在地のトップ10に入っています。

Peer Review Weekの趣旨

  • 学術コミュニケーションにおいて査読が果たす中心的な役割を強調
  • 編集者と査読者の仕事に焦点を当てる
  • 研究を共有し、ベストプラクティスを進展させる
  • 査読における最新のイノベーションと活用法をハイライト

Peer Review WeekのYouTubeチャンネルでは、査読に関するさまざまなウェビナーをご覧いただけます。

Twitter: @PeerRevWeek | #PeerReviewWeek21 | #IdentityinPeerReview

査読とは

査読(ピアレビュー)とは、論文がジャーナルに掲載される前に、その論文の質を評価するためのシステムです。関連する研究分野の独立した研究者が、投稿された原稿の独創性、妥当性、重要性を評価し、編集者(エディター)がジャーナルに掲載すべき原稿かどうかを判断します。

査読は、研究プロセスにおいて非常に重要な要素です。アカデミアの研究者は、お互いの研究を考察し、建設的な批評を行い、論文を改善することにより、初稿から最終公開版に論文が変化していきます。

科学が発展するためには、研究方法や研究結果が精査・検証され、そこから今後の研究の方向性が定められる必要があります。査読を経て、論文の出版が認められた場合、その研究が一定の基準を満たしていること、そしてその結果が信頼できるものであることを、科学者や一般の人々は確信することができます。

査読の仕組み

ジャーナルに原稿が投稿されると、その原稿が投稿基準を満たしているかどうかを編集チームが評価します。投稿されて原稿が基準を満たしている場合、編集チームがその研究分野の査読者候補を選び、査読および提案(recommendation)が行われます。

ジャーナルが査読を行うのは、投稿された原稿で報告された研究の妥当性を確認するためであり、その論文をジャーナルに掲載するかどうかの判断材料とするためでもあります。

編集者が原稿を即座に却下(desk rejection)しない場合、編集者は関連する分野の2人以上の専門家に原稿を送り、査読が行われます(ただし、複雑で学際的な論文は、より多くの専門家の意見が必要になります)。専門家は、査読者(peer reviewer)と呼ばれ、原稿を評価した査読報告書(reviewer reportもしくはpeer review report)を作成し、編集者に返送します。編集者は、査読者の報告書を読んだ後、次の3つの選択肢のうちの1つを選びます:a) 原稿を却下(リジェクト;reject)する;b) 原稿を受理(アクセプト;accept)する、または;c) 査読者のフィードバックにそって原稿を修正し、再提出(revise and resubmit)するよう著者に求める。著者が原稿を再提出する場合、編集者は、同じ査読者に、懸念事項が解決されたかどうかを確認するために、原稿に再度目を通していただくことがあります。これを再査読(re-review)と言います。

査読者が発見する問題点には、研究の方法や分析に誤りがあって結果に疑問がある場合や、原稿を理解しやすくするために明確な説明が必要な箇所などがあります。ジャーナル編集者の観点からは、原稿の重要性や新規性、ジャーナルの読者が興味をもつかどうかについてのコメントは、原稿の出版を決定する際に特に役立ちます。

査読の方法

従来、査読は、編集者と査読者は著者を知っているが、著者は査読者を知らないという、現在ではクローズド(closed)とよばれる方法で行われています。しかし、近年、多くのジャーナルでは、さまざまな方法で査読を行うようになってきました。ジャーナルによって査読の方法がそれぞれ異なり、大まかに次のように分類されます。

  • クローズド・ピアレビュー(closed peer review):査読者は著者のアイデンティティー(身元)を知っているが、著者は査読者のアイデンティティーを知らされていないもの。
  • ダブル・ブラインド・ピアレビュー(double-blind peer review):著者も査読者もお互いのアイデンティティーを知らない状態で査読が行われる。(参考:Double blind peer review for all?
  • オープン・ピアレビュー(open peer review):著者と査読者がお互いのアイデンティティーを知っている状態。オープン・ピアレビューを採用しているジャーナルの中には、査読者の氏名が公表された査読報告書がアクセプトされた論文と一緒に掲載されているものもある。(参考:Lessons learned from open peer review: a publisher’s perspective
  • トランスペアレント・ピアレビュー(transparent peer review):査読者は著者のアイデンティティーを知っているが、著者は、査読者が報告書に署名することを選択しない限り、誰が自分の原稿を査読したかを知らされない。原稿がアクセプトされた場合、匿名の査読報告書は、論文および査読者に対する著者の回答と一緒に掲載される。

通常、ジャーナルが採用している査読の種類は、査読依頼状やジャーナルのウェブサイトに明記されています。

査読者になる理由や査読のメリットについては、How to peer reviewのページをご覧ください。

BMCの査読

シュプリンガーの査読

ネイチャー・ポートフォリオの査読

Nature およびNatureリサーチ誌での出版における編集部の判断プロセス

Nature およびNatureリサーチ誌では、投稿された論文は、まず、研究経験と専門性のある社内編集者が読み、評価します。この時点では、結論の新規性や健全性、適切なデータや分析を含む証拠がその結論をどの程度サポートしているかなどが検討されます。また、倫理、利益相反、そのほかの品質保証のチェックも、編集サポートチームが同時に行います。(参考:Lifting the curtain on editorial decisions (or why some things get published and some don’t)

ネイチャー・ポートフォリオのジャーナルは、科学のあらゆる分野において、成果の報告の透明性と出版された結果の再現性を向上させることを目的としています。査読の前に、対応する著者は、editorial policy checklistに記入し、ネイチャー・ポートフォリオの編集方針に準拠していることを確認する必要があります。

査読の透明性

2017年にNature の査読者を対象に行った調査では、半数以上が査読の透明性を求めていると答え、出版社がそのためにもっと努力することを期待していることがわかりました。透明性の高い査読(論文の最終公開版と一緒に査読報告書を公開すること)は、研究者にこのような情報を提供し、システム全体の信頼性を高めるのに役立ちます。

トランスペアレント・ピアレビューは、オープンサイエンスの理念に沿って適応できる、より広範なオープン・ピアレビューモデルの一つです。トランスペアレント・ピアレビューという大きな括りの中でも、透明性にはさまざまな種類があります。ジャーナルによっては、透明性のある査読をそのジャーナルに必要な査読形式として採用しているところもあれば、著者にオプトインの選択肢を与えているところもあります。また、透明性の程度にも差があり、すべての査読報告書を、関連するやりとりや著者からの回答、編集チームからの文書と一緒に公開しているジャーナルもあれば、査読報告書のみを公開しているジャーナルもあります。

In Reviewについて

In Review(イン・レビュー)は、ジャーナルへの投稿と査読プロセスに、早期共有と透明性の高い査読(ピアレビュー)を統合した革新的なサービスです。シュプリンガー・ネイチャーは、初期の共有を常に強く支持しており、著者が初期の原稿をプレプリント(ジャーナルにおいて正式な査読を受ける前に著者が公開サーバーにアップロードする著者の研究原稿)として投稿することを積極的に奨励しています。In Reviewは、特定のジャーナルに論文を投稿する際に、その論文をオンラインで公開するオプションを著者に提供する無料のプレプリントサービスです。Research Squareとシュプリンガー・ネイチャーが共同で開発したIn Review(2018年10月より運用開始)は、ジャーナルで査読中の論文の状況を、査読タイムラインを通じて著者や読者に提供します。2020年の初めには、In ReviewをBMCやシュプリンガーのオープンアクセスジャーナルだけでなく、Natureリサーチ誌にも展開されました。In Reviewは、単なるプレプリントサービスではありません。査読との統合により、著者は査読プロセスの詳細を見ることができ、「隠された」プロセスに対して高い透明性を提供しています。In Reviewのような早期共有サービスによって透明性を高めることは、研究者やコミュニティーが査読プロセスの信頼性を確認するための一つの方法です。

BMCやネイチャー・ポートフォリオにおける査読の透明性については、Strengthening trust in peer review through transparencyをご覧ください。

査読の透明性とオープン化:研究の信頼性を構築するために」のウェビナー(2020年9月25日開催)は、Building trust in research through transparency in peer reviewのページもしくは、YouTubeよりご覧ください。

参考リンク

編集方針の多様性への取り組み

多様性に対する取り組みとして、シュプリンガー・ネイチャーは、当社が主催する会議、委託コンテンツ、査読者、編集委員会において、多様性と包括性を向上させるための行動を開始しています。

編集者は、外部執筆コンテンツの依頼、査読者の募集、イベント講演者の招待などの際に、意図的かつ積極的に女性研究者に働きかけるよう求められています。また、査読者の候補を提案する際には、著者も多様性を考慮して提案するよう求められます。進展は少しずつあるものの、パートナーや研究コミュニティーに対してより明確な声明を出すことで、公平性の方向に向けてより早い動きを促すことを目指しています。

ネイチャー・ポートフォリオは、科学コミュニケーションと出版における多様性と包括性を支援する活動を推進しています。多様性には、性別、人種・民族、地域、キャリアステージなど、さまざまな側面があることを認識しています。指針となる原則として、私たちは、社内での実践や出版されたコンテンツの中で、公平性、多様性、包括性を育み、これらの価値をすべての編集活動の中で具現化し、研究コミュニティーの中でこれらの価値を支え、促進することを目指しています。 ネイチャー・ポートフォリオのジャーナルは、査読者における性別の多様性を高めることを公約しています。編集委員会(Editorial Board)を有するジャーナルは、編集委員会のメンバーと協力して、査読者における性別の多様性を促進するという公約への認識を高めることを約束します。

参考リンク

査読への貢献を評価

査読者は、自身の時間と知識を捧げて、ほかの研究者の研究を検証・審査しています。シュプリンガー・ネイチャーは、査読者が果たす貴重で重要な役割を認識しており、査読者の貢献を奨励し、評価することで、その努力を支援します。

Publonsとの連携により、専門家である査読者の研究への貢献を公式かつシームレスに評価することができます。Publonsのプロフィールに査読を追加する方法については、Publonsのページをご覧ください。

参考リンク

Nature Reviews の取り組み

編集プロセスにおいて査読者が提供する時間と専門性を考慮して、Nature Reviews(Natureレビュー誌)の全ジャーナルは、出版された論文の外部査読に対する査読者の貢献を正式に認めています。2020年1月6日以降に投稿された原稿については、Natureレビュー誌に掲載されたすべての査読済みコンテンツに謝意を記載します。これには、査読者が匿名を選択した論文も含まれ、氏名を公表するかどうかは査読者のみに委ねられます。詳細については、Peer review initiativesをご覧ください。

トレーニングとチュートリアル

書籍の査読

査読は、ジャーナルの出版プロセスにおいてだけでなく、書籍の出版においても大事な要素です。

参考リンク

査読に関連するリソース


サポート情報

シュプリンガー・ネイチャーについて

シュプリンガー・ネイチャーは、175年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、公開するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心を持つすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良サービスを提供します。

学術出版社として、シュプリンガー・ネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャー・ポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。

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