[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャー、書籍を執筆する日本の著者に自動翻訳サービスの提供を開始
シュプリンガー・ネイチャーが初めて出版する日本語から英語に自動翻訳されたオープンアクセス書籍は、日本の栄養に関する歴史と栄養改善を概説し、栄養の力と人々の健康的な未来への希望が語られています。
2021年11月29日 東京
シュプリンガー・ネイチャーは、当社で出版する書籍の著者に、さまざまな言語から英語への自動翻訳サービスの提供を開始しました。今回の無料サービスにより、著者は、自身の母語で執筆し、英語で書籍を出版することができます。オープンアクセス(OA)書籍『Japan Nutrition(ジャパン・ニュートリション)』は、今回の新たな自動翻訳サービスを活用して、日本語から英語に翻訳されたシュプリンガー・ネイチャー初の書籍です。シュプリンガー・ネイチャーは、複数の書籍をドイツ語から英語に自動翻訳する試みを経た後に、このたび、複数言語を対象とする正式なサービスを開始しました。
自動翻訳サービスでは、著者が執筆した原稿をもとに、当社の自動翻訳チームが機械翻訳プログラム「DeepL」をベースにしたSN Translatorを使用して英語に翻訳します。その後、著者は翻訳された原稿を確認し、正しい翻訳内容になっているか、原稿の品質が当社が示している基準に沿っているかなどを確認します。著者は、機械で生成された翻訳によって意図しない誤った記述がないかを確認し、必要に応じて、適切な内容に修正することができます。現在、英語への自動翻訳の対象となっている言語は次のとおりです:日本語、中国語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語。自動翻訳によって生成された原稿であることは書籍の出版時に開示され、「DeepL」プログラムを用いて生成されたことが明記されます。
シュプリンガー・ネイチャーのDirector of Books Publishing SolutionsであるHenning Schoenenberger(ヘニング・ショーネンバーガー)は、次のように述べています。
「英語以外を母語とする著者の皆さまに、この自動翻訳サービスを提供できることを嬉しく思います。私たちと出版している著者の多くは、相当の英語力を有するものの、馴染み深い言語で書く快適さやスピードを理由に、母語での執筆を好みます。私たちは、この自動翻訳サービスによって、書籍出版のプロセスが加速され、世界中の読者が書籍にすぐにアクセスできるようになると信じています。
「翻訳ソフトウェアによる書籍の翻訳は、いくつかの不確定要素を含む発展中のプロジェクトです。今後もコミュニティーと協力しながら、ワークフローの改善や自動翻訳の対象言語の拡大を進め、このサービスが多くの著者に選ばれる信頼できるツールになることを期待しています。私たちは、書籍出版のためのツールや関連する技術を引き続き提供し、著者の皆さまと一緒にエキサイティングな新しいプロジェクトに取り組むことを楽しみにしています。」
今回の新たなOAの自動翻訳書籍『Japan Nutrition』は、約150年前に日本に栄養学が導入されて以来、日本の栄養改善の歴史を概説しています。日本は、長寿の国として知られていますが、これは伝統的な日本の食事によるものだと多くの人にとらえられています。しかし、日本の長寿は、戦後にもたらされたものであり、社会における栄養改善のために栄養士がたゆまぬ努力を行った結果です。それぞれの章では、栄養政策や栄養改善の実践によって、食糧不足による栄養不良を改善した歴史的なエピソードなどが紹介されています。本書の著者である神奈川県立保健福祉大学学長の中村 丁次氏は、日本栄養士会会長および日本栄養学教育学会理事長を務めるなど、現役の栄養士として多くの著書を出版しています。
『Japan Nutrition』の著者、中村 丁次氏は、次のように述べています。「現在の日本人の健康的な食事は、もともとあったのではなく、栄養学を基本にした栄養・食生活改善の成果として手に入れたものです。日本がどのようにして健康な食事を創造してきたのかという点を科学的に解説しておくことは、栄養不良で悩む人類にとって重要なことだと考えて、『ジャパン・ニュートリション』の執筆を準備してきました。特に、最近、栄養不良の撲滅こそがSDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)が達成できる基盤になることを世界の有識者が主張するようになったことが、執筆のきっかけとなりました。」
「本書では、最初に日本語の原稿に自動翻訳にかけて、著者が修正し、さらに言語学者であるネイティブのチェックを受けました。以前のように最初から自分で英語へ翻訳する方法に比べれば、負担は軽く便利でした。本書には、社会的、文化的、心理的な言語や概念があったので、ネイティブからいくつかの指摘があり、それは自動翻訳の限界だと感じました。この本には、現在のアジアやアフリカと同じように飢餓に苦しんだ日本が、なぜ持続可能な栄養改善に成功して世界一健康な食事を創造できたかを記したので、『ジャパン・ニュートリション』を英語で出版することで、世界の栄養関係者に読んでいただきたいと思っています。」
「栄養問題の解決には栄養学のみならず、農学、医学、家政学、政治学、社会学、環境学など、多種多様な学問の知識や技術が必要になります。本書は、できるだけ多くの人々に読んでもらいたいと思い、無料で読めるようにオープンアクセスにしました。特に、これから栄養学を学ぼうと思っている学生たちが読みやすいように考えたので、学生の必読書になれば幸いです。」
栄養は、私たちの生活にさまざまなかたちでかかわり、医療にかかわるほぼすべての分野を支えています。さらに、世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに直面している中、COVID-19に関連する症状の発症や重症化には、栄養不良や肥満、生活習慣病などの要因が関与していることがわかっています。また、2021年12月には「Tokyo Nutrition for Growth (N4G) Summit 2021」の開催が予定されており、世界的にも栄養の持つ力に注目が集まっています。
書籍について
- 書籍名:Japan Nutrition(ジャパン・ニュートリション)
- 著者:Teiji Nakamura, President, Kanagawa University of Human Services (中村 丁次、神奈川県立保健福祉大学学長)
- 発行日:2021年11月27日
- 言語:英語
- 書籍のURL:https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-16-6316-1
本書は、おもに栄養学の専門家、栄養士、栄養管理者、医師、薬剤師、看護師、理学療法士、栄養教育者、調理師、栄養ボランティア、健康・栄養食品開発者、学校給食管理者などを対象に執筆されています。さらに、栄養学を学ぶ学生、管理栄養士の教育・訓練に携わる教員、栄養や食生活、栄養不良の改善方法などに関心のある一般読者にも役立つ内容となっています。
翻訳は、人工知能の助けを借りて行われました(DeepL.com による機械翻訳)。現行版は、著者がインディアナ大学の名誉教授Andrew R. Durkin博士と共同で技術的、言語的に改訂したものです。
日本語の書籍
書籍名:臨床栄養学者中村丁次が紐解くジャパン・ニュートリション(第一出版、2020年8月)
URL: https://daiichi-shuppan.co.jp/products/e009
中村丁次氏のインタビュー記事:Natureダイジェスト2021年12月号「東京栄養サミット2021で「日本の栄養」を世界へ!」
1972年に徳島大学医学部を卒業。新宿医院、聖マリアンナ医科大学病院などで臨床栄養士として勤務。1978年より東京大学医学部に研究生として在籍し、1985年に博士号を取得。
2003年からは神奈川県立保健福祉大学の教授に就任。学科長、学部長を経て、2011年から現在まで学長を務める。また、日本栄養士会会長、日本栄養学教育学会理事長などを務める。2013年、厚生労働省「日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会」座長に就任。
2021年12月7日、8日の両日、日本政府の後援で東京栄養サミット2021が開催されます。このサミットに先立ち、2021年のオリンピック開会式前夜にGoalkeepers TokyoでN4Gキックオフイベントが「スプリングボード(出発点)」として開催されました。これらのイベントは、N4Gの過去の功績を引き継ぎ、より健康で栄養的に改善された未来に向けた新たなレースの始まりを示します。これは、最も脆弱な人々を含むすべての人々が2030年までに安全で栄養価の高い食物を手頃な価格で入手できる世界を実現するためのレースとなります。
2021年にシュプリンガー・ネイチャーが開催した有識者会議の報告書はこちらです: “Building better food systems for nutrition and health”
東京栄養サミット2021公式サイドイベントとして、シュプリンガー・ネイチャーは、2021年11月9日~10日の2日間、無料のバーチャルイベント「Hungry for change: Food systems for nutrition and health」を開催しました。このイベントには、中村 丁次氏をはじめ、Springer Nature編集長であるSir Philip Campbell(サー・フィリップ・キャンベル)、Nature Foodの編集長であるAnne Mullen(アン・ミューレン)など、世界中からスピーカーが参加いたしました。本イベントの録画は、イベントのウェブサイトからオンデマンドでご覧いただけます。
シュプリンガー・ネイチャーは、175年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、出版するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心をもつすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良なサービスを提供します。
学術出版社として、シュプリンガー・ネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャー・ポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。
DeepL は、人工知能を使って世界中の言語の壁をなくすことを目標に掲げているドイツの企業です。2017年より、ブラインドテストにより世界最高の翻訳品質を実現した機械翻訳システム「DeepL Translator」を、www.DeepL.com で提供しています。また、企業や団体、翻訳者向けにプロフェッショナルな製品を提供しています。これまでに5億人以上の人々が DeepL のサービスを利用しています。
DeepL の機械翻訳サービスの卓越した品質は、ニューラルネットワークの数学と方法論においてチームが達成した独自の改良にもとづいています。日本語翻訳サービスは、2020年3月より、DeepL が提供しています。DeepL の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。
https://www.deepl.com/en/press.html
シュプリンガー・ネイチャーは、Frankfurt Book Fair(フランクフルト・ブックフェア)2021にオンラインとオンサイトの両方で出展しました。ブックフェア期間中には、いくつかのオンラインイベントを開催し、その中の一つのセッション「How Artificial Intelligence and machine learning is open up science(人工知能と機械学習はどのように科学をオープンにするのか)」では、科学を変え、研究をオープンにするために、AI(人工知能)がこれからどのような役割を果たしうるかを探ります。イベントの録画は、ウェブサイトでどなたでもご覧いただけます。
宮﨑 亜矢子
シュプリンガー・ネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
Tel: +81 (0)3 4533 8204
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com